おいでんさんそんセンターのセンター通信ブログ

基調報告『見えてきたミライ』 【H29年度くるま座ミーティング】

2018年02月21日


平成29年度いなかとまちのくるま座ミーティングを2月4日に開催しました。
基調報告「センター5年の軌跡~見えてきたミライ」で、鈴木辰吉センター長がこれまでの取組みと、見えてきたミライの形について述べましたのでご紹介します。

①いなかとまちをつなぐ「中間支援」のかたち

・新しい時代に向けた豊田市の挑戦
 「中間支援」とは、元来NPOの活動支援、NPOはじめ市民活動団体と行政との協働を仲介することを指します。おいでん・さんそんセンターは、いなかとまちをつなぎ、双方の強みで課題を解決に導く、新しいタイプの中間支援機関です。センターのなりたちを話す時間がないですが、豊田市は2005年に合併をして、山間地区に相当の投資をしながら、経済対策や社会資本整備を重点的にやってきましたが、人口減少にはほとんど効果がありませんでした。むしろ合併前の人口減少率は10年で8.5%でしたが、合併後の人口減少率は10年で14.2%。思い切り加速をしてしまいました。
 経済対策や社会資本整備だけでは効果が見いだせなかった人口問題に対する新たなアプローチが、豊田市の挑戦としての「おいでん・さんそんセンター」です。都市と農村をつなぐことで双方の課題解決をすることがおいでん・さんそんセンターの存在意義です。

・拡大と成長の時代が生んだ様々な社会課題
 5年間で約170のマッチングをしてきました。山村部からは、過疎に伴う集落活動の停滞、森や農地の荒廃などの課題、都市部からは、生きがいや社員教育、子どもの教育などの課題が持ち込まれ、向き合ってきました。
 それら過疎、格差、環境問題というのは、拡大と成長の時代が私たちにもたらした豊かさの代償である負の課題ばかりでした。センターの仕事は、拡大と成長の時代に、断ち切られてしまった都市と山村の絆を、1本1本結び直す迂遠(うえん)な取り組み、作業とも言えます。

・公の信用と民の迅速性、柔軟性、専門性
 豊田市が中間組織としてセンターを立ち上げ、昨年の4月に民間に移行しました。半官半民。行政には信用があり、民間には迅速性・柔軟性・専門性があり、その両方を兼ね備えた組織は使い勝手が良いです。市の窓口である「おいでん・さんそんセンター」を民間の「一般社団法人おいでん・さんそん」が運営する形は、公の信用を背景にしつつ民の迅速性、柔軟性、専門性を発揮できます。

②過疎とどう向き合うか

・価値観の多様化と移住
 都市部の人口が山村部の人口を上回ったのは1950年代。もともとは山村のほうが、人口が多かったのですが、高度経済成長と共に都市に人が集まり、1950年代に逆転をしました。国土の3分の2をわずか5%の人口で治めなくてはならない現状を「過疎」と言っています。国土の3分の2は、本当にまばらで5%の人しか住んでいません。
 豊田市の人口は425,000人、合併5町村の人口は22,000人。ちょうど5%の人口で市域の3分の2を治めています。豊田市は、そういう意味でも、まさに日本の縮図といえます。豊田市は、2016年3月に山村地域だけの人口ビジョン「おいでん・さんそんビジョン」を策定しました。毎年40世帯の子育て世代の移住を果たせば、山村地域は持続可能な地域になるという計画です。豊田市を国土に見立てた場合、40世帯というのは、都市部の世帯170,000世帯の0.0002(0.02%)が移住するだけで過疎問題が解決するということになります。本当にわずかな人が移住するだけで過疎問題が解決することがわかります。
 内閣府の2014年の世論調査では、都市部住民の31.6%が、「どちらかというと」という人も含めて、農山漁村に暮らしてみたいと答えています。2005年の調査では20.6%でした。この間には東北の大震災がありました。大きな災害などがあると、人々の意識が大きく変わるということが表れていると思います。31.6%の方が可能なら農山漁村に暮らしてみたいとおもっているわけなので、0.02%の人が来てくれればいいのに、そんなに来てくれる必要はないわけです。過疎対策は、大したことがないということをここで強調したいと思います。
 価値観が多様化し、山村で暮らしたほうが幸せだと考える都市部の人が増えています。過疎対策には、経済対策や、社会資本整備も大事ですけれど、「過疎対策=移住対策」と言いかえても良い程、移住対策は過疎対策に有効だと思います。

・「関係人口」が地域を支える
 つい最近、総務省が、公式文書の中で「関係人口」という言葉を使い始めました。交流人口以上、定住人口未満の人たちのことを指し、企業のCSRや山村体験に通い詰める人、山村地域の物産を恒常的に買い支える人などのことを言います。
センターでは、かねてから「関係人口」という言葉は使っていませんが、こういう方たちの重要性を意識して取り組みを進めてきました。

・過疎なんかこわくない
 移住を進め、「関係人口」を増やせば、過疎なんかまったく怖くありません。
空き家情報バンク制度を利用した移住は、8年間で170世帯、430人。年平均20世帯以上で特に今年度は4~12月時点で29世帯、70人。目標の40世帯は目前です。決して高いハードルではありません。



③地域の持続化と住民自治

・移住、関係人口を受け入れる自治
 移住、関係人口を受け入れている地域はどこか。残念ながら、山村地域で満遍なくという状況にはなっていません。まだら模様です。
 旭地区の敷島自治区、足助地区の新盛や冷田自治区、下山地区の和合自治区などが突出していて、そこには地域の存続をかけた住民自治の営みが顕著にみられます。拡大と成長の時代に分業化が進み、行政依存、住民自治の後退があったことは否めません。自治の復権が地域の持続化につながるのだと思います。

・住民自治をけん引するのは人材
 そして、住民自治の営みが顕著にみられる地域には住民自治をけん引するリーダーが必ず存在しています。地域リーダーの育成、発掘といった人材育成がこれからますます重要になっていきます。
 一方、日本全体の人口が減少を続ける中で、全ての集落が存続できるわけではありません。センターでは、「上手な集落のたたみ方」をテーマに研究に着手しようとしています。後退的な発想はだめじゃないか、と言われるかもしれませんが、全部の集落が残っていくことはありえません。中には、たたんでいく集落もあります。どうやってたたんでいくかということは重要な事だと言えます。センターは早速その研究に着手していきたいと思います。

・真の地方創生
 日本全体の人口が減少しています。国を批判するつもりではないですが、全体のパイが減る中で、地方創生の名のもとに自治体間の人口争奪戦、ふるさと納税の返礼品合戦が繰り広げられているのは、全く不毛の戦いではないでしょうか。
「移住」は、一般的には県外からの移住を指します。長野県ではそういうふうに定義されています。しかし豊田市の「移住」の定義は違います。地域の担い手を受け入れることを言い、市内からの移住、県内からの移住を歓迎しています。したがって人口争奪戦でパイを奪い合うとはまるで違う次元の考え方をしていると言えます。地方は、かつては「じかた」と読み、対置するのは中央ではなく「町方(まちかた)」でした。食料や人材、物資などが循環する「じかた」と「町方」の関係こそ真の地方創生原点にあるということを、京都市立芸術大学 鷲田清一(わしだきよかず)さんが新聞で述べていますがまさにその通り。豊田市でも都市といなかをつないで色んな循環を起こしていきましょう。そのことが全国に横展開していけば、日本という国の地方創生が叶うと考えています。

④山村の暮らしが教えてくれるもの

・自然と土とともにある山村の暮らし
 私は、合併した旭地区の山のてっぺんに住んでいます。山村の暮らしは、人が自然の一部であることを、自然や他者と結びあうことで安心できる存在であることを教えてくれます。人類の驕りを制御してくれる場所でもあると考えます。

・買う暮らしと幸福感、つくる暮らしと幸せ
 都市では、お金さえあれば何でも買えます。拡大と成長の時代は、全ての価値をお金の量で測ることを一般化し、幸福かどうかさえもお金の多い少ない、他人との比較でしか判断できなくなっているように思います。「うちはあそこより所得が多いから幸福かもしれない」というのは、幸福ではないと思います。「幸福感」程度だと思います。
山村の暮らしや、自給や支えあいをベースにした「つくる暮らし」は、他との比較ではなく、今あることの喜び、安心といった普遍的な「幸福、幸せ」をもたらします。そういう価値観の人が移住先として山村を目指してどんどん来ています。

・山村を山村らしく磨き上げる
 従って、便利な都市に山村を近づけようとするのではなく、山村は山村らしく磨き上げられなくてはなりません。

⑤見えてきたミライ

・先進国に富が集中した時代は終わった
 昨年の9月の一般社団法人立ち上げ記念シンポジウムでセミナーを行いました。哲学者の内山節(うちやまたかし)さんがそこで述べました。「先進国に富が集中した時代は終わりました。現在、「強い国家」を取り戻そうとする動きと、共に生きる社会を作ろうとする動きが同時に進行しています。今に始まったことではなくて、かなり前から繰り返されてきました。そのどちらかが優先されて高度経済成長という150年くらいの時代が進められてきた。今またそれが問われています」と。先進国に富が集中する時代は終わったというのが内山さんの答えです。
「降りていく社会」、「経済が縮小する社会」。これまで成長してきた国は、降りていく社会に舵を切るべき時が来ています。

・「縮充する地域」と参加の仕組み
 コミュティデザイナーの山崎亮(やまざきりょう)さんが「縮充する日本」という本を出しています。 「人口や税収が縮小しながらも地域の営みや、住民の生活が充実したものになっていく仕組みを編み出さなくてはならない時が来ている。それは、楽しく誰もが参加する仕組みであり、その向こうに日本の未来がある」と書いてあります。「縮充」という言葉は新しいですが、今まさに豊田市でそれに取り組もうとしているのがおいでん・さんそんセンターです。

・生き方が選べる社会、支えあう社会
 見えてきたミライは、「生き方が選べる社会、支えあう社会」です。
 2017年国連の世界幸福度ランキングでは、ノルウェイが1位、日本は先進国最下位の51位。それでも2016年より2位上がっています。主要な指標は「人生の選択肢がある」、「身近に相談できる相手がいる」、「余暇と仕事にメリハリがあるか」などです。もちろんGDPなどの経済指標も含まれますが、それを以ってしても51位。「人生の選択肢がある」、「自分の生き方を自分で選べる」ということが順位を上げていますが、日本はまだそういう社会になっていません。我々がこれから求めていくのは、生き方が選べる社会。身近に相談できる相手がいるというのは、まさに支え合う社会だと思います。そういう社会に向かっていくのだろうと思います。



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