おいでんさんそんSHOWピックアップ

『お互いに元気になれる。』  元気ファームが企業と地域に与える効果。

2016年06月30日

対 談



「試行錯誤しながらひとつひとつやっていくことが意味のあることだと感じています」



おいでん・さんそんセンターでは、山里交流コーディネートの一環として、都市部企業と山村地域をつなぐことで、双方の課題解決を図る新たな関係性づくりを目指す取組を推進しています。その事業モデルの一つとして、旭地区で耕作放棄地や農業の担い手不足などの問題を抱える伊熊営農クラブと、農業や地域との関わりを通じて若手社員の育成を目指すMan toMan㈱(名古屋市)のマッチング事例をご紹介します。
 スタートして間もなく一年が経つこのプロジェクトで、企業、地域にそれぞれどんな効果が出始めてきたのか、お話を伺いました。




「管理ができなくなって困っていた農地が蘇った様子を見て、よかったなぁと思っています」



Man to Man株式会社 澤 知明 氏 X 伊熊営農クラブ 後藤 京一 氏

―元気ファームを導入したきっかけを 教えてください。

 リーマンショック以降、Man to Man㈱の社内にはひどい閉塞感が 漂っていて、「言われたことだけやればい い」といった風潮がありました。そんな 中、海外進出のための赴任希望者を社内 募集したのですが、若手社員は手を挙げ ませんでした。受け身な姿勢が蔓延して いることにショックを受け、人材開発の一 環として34歳以下の社員が定期的に イベントや勉強会をする「若手会議」を やることにしました。講師を呼んで勉強 会を1年くらいやっていたのですが、何 か面白みに欠けると感じていました。方 向性を迷っていたところ、ちょうど㈱ジ オコスの伊藤社長が元気ファームの企画 を提案しに来ました。それを聞き「これだ」と導入を即決しました。


―人材開発の点から元気ファームが良 いと思ったのはなぜですか?

 与えられた条件の中で、強制されずに 自発的に企画し実行する。田畑を耕し、米 や野菜を作る元気ファームでは、若手社員 が育つプロセスを重視した取組ができると 感じたからです。普段の仕事では失敗すると上司にとがめられても、「元気ファーム」 での失敗は自分自身で反省して次に活か せばいい。可能性のある事業だと感じてわくわくしました。



―伊熊営農クラブが、Man to Man ㈱の受け入れを決めた経緯を教えてください。

京一  伊熊町では30年くらい前から徐々 に管理できなくなった田畑が増え、農地の 荒廃が進んでいました。どうにかしたいと 始めたのが伊熊営農クラブです。町内で余 力のある人が耕作を請け負い、地域で支え 合って農地を維持していく仕組みです。最 近は請け負う側も大変になってきて管理 できなくなる農地がでてきました。そうい う農地を含め、地域全体に関わってもらえ ると聞いてお引き受けしました。


―社員の方たちと活動されてきて、印象 に残ったエピソードはありますか?

京一 始まって間もない頃、堆肥を撒いても らったことがありました。7月の暑い中で の作業だったので、皆さん張り切りすぎた のかバテていましたが、涼しいところで休 憩を取ると和らいだ表情に変わりました。 若い方たちのそんな顔がいいなと感じま した。こんにゃく作りを体験して食べても らった時には「すごく美味しい!」と皆さん 言われました。この辺で普通に食べている ものを出してあげたらいいかなと、4月か らうちの奥さんがご飯を作って皆さんに 提供させてもらっています。

 山菜の天ぷらなどもいただきました が、とても美味しい。最近は食事しかしな い「食事班」もあるんですが、それはそれで 良いと思って見ています(笑)

―2年目となる現在までに、社員の方に 変化はありますか?

 アンケートの結果には、「一緒に参加した社員同士、横のコミュニケーションが 取れるようになった」「自分のできることを 率先してやれるようになった」などの声が ありました。「やろうと思っていたことがで きなかったという反省もありましたが、そういう気づきは次につながっていくと思 います。課題としては、休みの日に作業をするため参加者が固定してしまうということがあります。家族で参加できるプログラムを考えたりして、強制ではなく「来たい!」と思えるような魅力を高めて、もっとにぎやかに活動したいです。


―伊熊町の皆さんに変化はありますか?

京一 管理ができなくて困っていた農地が 甦った様子を見て、良かったなと思ってい ます。みなさんが毎月来てくれることがわ かっていると、例えば「6月は、あまごを焼 取材当日、工場を案内していただくと実際に多くの女性が縫製作業をして働いていました。 いて食べさせてあげたらどうだろう」とか、 色々考える機会になります。伊熊町が賑 やかな様子を見て、他の地域の方に「いろ いろやられていますね」と言われれば嬉し い。田舎には部落根性みたいなものがある ので(笑)。月1回の寄合に出てくる人数は 受入れ前には13人だったのが最近はいつ も24人出てくるようになりました。「元 気ファーム」のおかげで地元も元気になっ てきています。  豊田市のわくわく事業に申請して新し い取組も始めました。水はけの悪い田んぼ があって、社員の方からそこに花を植えた いというアイデアが出たんですが、普通の 花を育てるのは無理。使っていなかった井 戸水を入れて蓮の花を浮かべたらどうだろうと話が膨らみました。「元気の泉」と名 付けた計画をわくわく事業に申請し、補 助金をもらって実現に向けて動きはじめて います。モネの絵画『睡蓮』のような美しい 景色を作って伊熊の名物にしたいです。


―今後の抱負をお聞かせください。

 「元気ファーム」の活動がすぐに会社 の業績アップにつながるとか、社員が目に 見えて変わるとか、短期で結果が出るわけ ではないと思います。試行錯誤しながら やっていく作業や京一さんを始めとした伊 熊町の皆さんとのコミュニケーションのひ とつひとつを丁寧にやっていくことが Man to Man㈱にとって意味のある ことだと感じています。仕事とは別の活動 を続けることで、中長期的に新しいビジネ スのヒントも得られると考えています。

京一 受入れ側として今は伊熊町の人が 中心ですが、築羽自治区の人たちにもこれ から積極的に関わってもらえるように働 きかけていきたいと思います。今度らっ きょうを掘って漬ける体験をしてもらうん ですが、その講師を築羽自治区の人にお願 いしています。もっと 色んな人に関わって もらうことで嬉しい 効果が増えていくと 思います。(取材/  坂部友隆・文/木浦 幸加)

  伊熊町の動きが自治区全体に広がろうとしています。松嶋区長にお話を伺いました。


築羽自治区として平成29年度頃から、県営農地環境整備事業の補助を受け、今後耕作が続けられるよう農地の修繕を行なっていきます。しかし、高齢化や担い手不足の問題を抱える中、個々の農地を維持管理していくのは容易ではありません。今年度から伊熊町の取組を広げるべく、築羽地域として受け皿をつくっていきたいと考え、動き出したのが「つくば営農組合」の組織化です。伊熊町を主体としてその他に惣田、小畑、槙本、日下部町の賛同者に加入してもらい集落営農の枠組みを拡大。それに一本化しようという訳ではなく、自分で管理できる地域は続けてもらい、お手上げになった地域は営農組織に入ってもらいます。営農組織で全て背負うのではなく、どうしたら続けていけるか、話し合いで決めていきたいと思います。
 農地保全と同時に、移住者の受入れのために使われていない空き家を貸してもらえるよう働きかけていくなど、過疎対策にも今後取り組んでいきたいと思います。(取材・文/坂部友隆)

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