おいでんさんそんSHOWピックアップ

センター開設3周年記念対談

2016年08月31日


戸田友介   ×


㈱M-easy 代表取締役。

2009 年の「日本再発進!若者よ田舎を目指そう プロジェクト」をきっかけに旭地区に移住。

牧野 篤    ×


東京大学大学院教育学研究科

教授。

日本のまちづくりや高齢化・過疎化問題、多世代交流型コミュニティの構築などに取り組んでいる。豊田市総合計画審議会委員。

鈴木辰吉


おいでん・さんそんセンター

 センター長。


●開設のきっかけは、『若者プロジェクト』だった

ー去る8月8日に開設3周年を迎えたおいでん・さんそんセンターですが、記念対談がこの3者で行われることになったのはどんな理由からですか?ー

辰吉 「若者よ田舎をめざそうプロジェクト( 以下、若者プロジェクト)」が2009年に旭地区の敷島自治区で始まった時、私は豊田市役所で産業部に所属していました。産業部に30年間いて頭に沁みついていたのは「企業も、地域も競争に勝ち残る」ということ。田舎で有機野菜を栽培するという若者プロジェクトは競争からはかけ離れていて「失敗するだろうなぁ」と感じていました。ところが私の自宅の側で若者たちが炭を作ったり畑を耕している様子を見ていて、いつの間にか応援するようになっていました。

 その後、総合企画部に異動になり過疎問題の担当になりました。ある講演で

-「農村は人口減少・高齢化の先進地、農村を諦めることは日本を諦めることだ」-

と聞いて、若者プロジェクトの真のねらいは、このことだとピンときたんです。人口減少・高齢化の下で農村を再生するための中間支援機関が必要だと思い立ち、2013年の3月に市役所を退職して設立準備をし、8月に立ち上げました。若者プロジェクトが、センター開設の大きなきっかけでした。今回、牧野先生、戸田さんにお越しいただいたのはそういう理由からです。

-「若者プロジェクト」のきっかけと、内容を教えてください。


牧野 豊田市が2005年に合併して山村部で急速に過疎化が進んでしまっていました。行政サービスの拡充などやっても効果がない。前市長から相談を受け、調査に入らせてもらうと地元の方から「農林業では食べていけなくなったこと」「地域は自分たちの世代で終わりだからほっておいてくれ」と諦めとも取れるお話がありました。でもじっくりお話を聞いてみると「やっぱりどうにかしたい」気持ちがある。「農林業をやって食べていかない」農山村の在り方があるんじゃないかと考えて「LOHAS的なライフスタイルを作り出して、都市生活になじめない人たちを呼び込んでまちを活性化する」という仮説を立てました。そこで計画したのが「若者プロジェクト」でした。M―easyが事業の受け皿となり豊田市からの委託を受けて、全国公募して集まった10名を雇用し、旭地区で有機・無農薬の農業をやるというプロジェクトです。当初は、栽培した野菜を都会に販売して農業経営ができる人材を育てる方向でやっていたんですが、半年を過ぎたあたりから上手くいかなくなってきました。まずは農業を基本にしながら自分たちが食べられる状況に持っていこうとしたことが、「お金を稼ぐ」発想から入ってしまうことになり色々問題が出てきてしまったんだと思います。そこで2年目からは戸田くんに来てもらい、新しいライフスタイルを作る方向にもう一度切り替えていくことにしました。

-戸田さんが若者プロジェクトに関わることになって、変わったことは何でしょうか?

戸田 当初は「有機栽培の野菜を作り、それを移動販売で売って稼ぎを作る。その稼ぎをもとに農村での生活をしていこう」という枠組みにメンバーをどの役割で当てはめるのか、というやり方でやっていました。一年経ってみると、メンバ―の皆が、仕事の面でも生活の面でも、プロジェクトを継続するのが難しいくらいに疲弊していました。でも、「旭地区に住み続けたい」「いつも良くしてくれる地域のひとたちに恩返しがしたい」という気持ちが皆の心に共通してあって、その想いを叶えるにはどうしたらいいかを皆が考えるようになりました。地域の方々に支えられながら、メンバー同士それぞれ『どう生きたいか』を話し合ったり、じっくりあせらずに自分自身とお互いに向き合う時間を持ちました。そこから「自分達がこの地域を好きになったように、地域のファン作りをしよう、そのために出来ることを、やれることからやっていこう」という答えが自然に導き出されました。

牧野 メンバーが仲たがいしている時でも、地元の方が彼らの生活を支えてくださっていたことが、一番大きかったと思います。

●外からの若者と住民の共働が地域を変える

-若者プロジェクトで見えてきたことは、何でしたか?

牧野 単に農業で生計を立てるだけでなく、地元に伝わる食品加工の技術を地元の方から学び販売したり、都市と農山村の交流イベント「ご縁市」を開催したり、都市住民と米、大豆を栽培・収穫したりといった田舎暮らしを発信する事業を育ててきました。またプロジェクト3年目には、彼らの活動を見て各地から若者たちが移住してくるようになりました。移住した若者に子どもが生まれ、集落で25年ぶりの誕生に地域は喜びで湧いていました。当初の予想では、プロジェクトを通して若者自身が生活を作ると考えていましたが、そうではなくて、地元の方が彼らを受け入れて交流することで一緒に生活を作り上げて、その関係が出来ていくなかで地域が変わっていくということが見えてきました。そのことは私たちにとって驚きであり、発見でした。

●旭地区に移住して学んだことが本当に多い

-戸田さんにとって、若者プロジェクトとは何だったんでしょうか?


戸田 僕自身が旭地区に移住して学んだことが本当に多い。地元の方、メンバー、行政の方など、たくさんの方たちと真剣に向き合っていくなかで、メンバーの皆と同様に僕自身も救われていく、そういう時間でした。

-3周年を迎えたセンターですが、現在の到達点はどのあたりだと思われますか?

辰吉 地域おこし協力隊の坂部が中心となって企業の社員研修を山村部の田畑でやるというマッチング件数が7社くらいになったり、スモールビジネス研究会で「ひとりひとりの暮らし、生き方」に寄り添ったミライの職業訓練校が立ち上がったりしています。直近では、移住定住専門部会を中心に、「空き家にあかりを!プロジェクト」で、地域における空き家活用の気運づくりの動きをしています。10 00人あたり2世帯の子育て世代の移住で地域は持続化する。仕事はなくてもスモールビジネスは生まれるんですね。他にも次世代育成、森林、食と農の専門部会が独自の活動を展開しており、手探りながら都市と農山村をつなぐプラットホームの形が見えて来たかなと思います。

牧野 仕事に関して、2008年に調査したときに分かったことは仕事がないといいながら地元には工場なんかもある。でもその工場のひとは「人手がない」と言っている。仕事があるのに地域に人が来ないのはなぜかと考えると、地域に人を惹きつける文化がないからだろうと。そういう意味でスモールビジネスは、理想の生活をしようと思うことでうまれてくる仕事が多い。産業や人のニーズは、個人から生まれるものじゃなくて、人間関係が発生することで出てくるものなんです。だから、山村部に移住することで人とのつながりが生まれて、何かを買ったりするニーズが出てきて、それがスモールビジネスとつながって小さななりわいが重なって楽しい生活・文化が成り立ち、地域の経済が動いていくというふうになるんだと思います。


●新たな価値観を広げるための民営化

-おいでん・さんそんセンターの次のステップはどこでしょか?

辰吉 「お金より暮らしを大切にする生き方」は、まだ世の中の常識から、かけ離れていると感じています。このことを少しでも多くの人が理解することで、「競争しない生き方がある」とわかった人が、安心して山村部に移住して生活する、そのことで地域が持続していくということが成り立っていく。その運動を広めていくための民営化をしていこうという議論を今年は始めています。市役所の出先機関として信用をいただいて運営する部分を残しつつ、民営化していこうとしています。高度成長時代のなかで壊れてしまいましたが、かつて、まちにも農山村にも自治の営みがありました。自治の機能を取り戻して、住民自身が地域を持続化していくことが最終的な目標だと思います。

●新しい自治づくりが、センターの使命

-最後にセンターに何かアドバイスをお願いします。

牧野 今までは潤沢にお金があって行政サービスが出来てきましたが、これから高齢化が進んだりして豊田市も楽観視できません。住民自身が、自分たちの地域のことを自分たちでちゃんと解決する仕組みを作って、行政がお金をあまり払わなくても回っていく仕組みが出来ていくことが必要だと思います。おいでん・さんそんセンターが関わりながら、20世紀には価値が無かったと言われている山間地が、新しい形 の自治を取り戻して、21世紀のリーダーになっていく可能性はいくらでもあるんじゃないかと思います。


今回の対談は、若者プロジェクトの成果を改めて振り返りながら、おいでん・さんそんセンターの方向性が確かなものであることが確認できた大変貴重な機会となりました。
(取材・文/木浦幸加 写真/坂部友隆)

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