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「原木シイタケ」で暮らしを豊かにー若手農家やU・Iターン者に、栽培研修が人気

2019年02月04日


「お〜い、どけよ〜」という講師・近藤一義さん(66)の掛け声とともに集材機のエンジンが唸り、ウィンチが動き出す。上空に張られたワイヤーにテンションが掛かり、200キロを超えるナラの丸太が谷下からズルズルと引き上げられる。

 今年1月18日(金)に、寒風吹きすさぶ中で行った原木シイタケ栽培研修2年目の「玉切り、集材」の一場面。参加者は、谷下で丸太にワイヤーを架ける人と、上で外す人に分かれ、ひたすら
作業を繰り返す。手のひらに乗る「シイタケ」を育てることからは想像できない大掛かりな作業に、参加者は真剣な表情で取りくんでいる。一つ間違えれば大ケガに繋がりかねないからだ。

原木シイタケ 第一人者の思い 

 和合町(下山地区)在住の近藤さんは、旧下山村森林組合に就職して以来、主にシイタケ生産の指導員を担当してきた。そして、技術指導ばかりでなく自らも生産者として35年にわたって原木栽培に携わり、下山の特産品「乾シイタケ」をブランド化。地域の生産・出荷体制を築き上げてきた第一人だ。 

 始まりは、2017年の4月。近藤さんがセンターに来所し、「このままでは原木シイタケのブランドが失われてしまいます。誰かがやっていただけるなら、持てる技術をお伝えしたい」と、相談に来たことからだった。高齢化で原木栽培をやめる生産者が後を絶たないことに危機感を抱き、自分が動けるうちに後継者を育成したいという強い思いが伝わってきた。
 健全な森と共にある豊かな暮らしの実現に向けて研究・実践する、おいでん・さんそんセンター森林部会が、近藤さんの思いに賛同共感し、「原木シイタケ栽培研修」は始まった。


集めた原木をチェンソーで玉切りする


架線でナラの丸太を集材する


使うことで蘇る里山

 原木シイタケの栽培は、山村地域における自給的な暮らしや冬場の収入源として始まり、1965年頃までは薪炭業とともに盛んに行われてきた。
 現在は、厳しい労働環境と価格低迷、後継者不足などを理由に衰退し、効率化が進んだ(※)菌床栽培が主流になった。薪炭は燃料革命により生活エネルギーとして利用されなくなり、原木生産林は放置され、高齢・大径木化が進んでいる。太くなりすぎた広葉樹は原木として低質化し、人の営みが減少した森ではイノシシやシカなど害獣の生息域拡大、山菜など有用植物の減少につながっていることが指摘されている。
 豊かな里山林、生物多様性は、人が使うことによって維持されてきたのである。


近藤さん(右から3人目)の声に耳を傾ける参加者


研修を待っている人々がいた

 1年目(2017年度)の研修には事務局を担う森林部会の「2万円もの参加費の研修に応募があるだろうか」という心配をよそに、自家用のシイタケを栽培したい山主、定年退職後の小仕事として始めたい人、森の恵みで豊かな暮らしをつくりたいU・Iターン者等、予想を超える17名もの参加があった。研修場所は、豊田森林組合の紹介で日下部町(旭地区)にある個人の雑木林を借りることができた。

 8月に伐採地の下草刈り、10月の紅葉が始まるころ伐倒を行なった。その後2ヵ月間葉枯らし、1月に玉切り、集材、3月に菌打ちし現場に伏せ込んだ。
 幸運にも最高な条件で作業を行なうことができ、シイタケ原木の出来栄えは、講師の近藤さんが太鼓判を押すほどとなった。原木に菌が十分繁殖する2019年秋に、各自のホダ場に一人100本を持ち帰り、収穫や出荷を経験する予定だ。


菌打ちの様子(2017年度)


若手農家が続々参加

 2年目(2018年度)の研修場所は、黒坂町(下山地区)で開催している。森林部会が最も期待していた、山村地域で活躍する若手農家、U・Iターン者、森林組合職員など、18名の参加申込みがあった。
 10月末に行った伐倒は、幹の直径が30センチ近くある大木も多く、素人での作業は危険なため、プロに依頼した。今年1月、3日間にわたって行った玉切り・集材は、伐倒木をチェンソーで1メートルの長さに切断し、3月に植菌しやすいよう集めた。2時間で設置ができる架線集材による手法も講師から学ぶことができた。

 伐採や植菌の時期は、すべて自然との対話で決まってくる。講師の長い経験の中でも10年やって1回上手くいくかどうか、経験と勘がものをいう世界だ。また、太くなりすぎた原木を扱うにはリスクも高い。そのため、「できるだけ自然に逆らわない、無理をしない仕事を心がけて欲しい」と、近藤さんは参加者
に話す。

農業の裏作として

 農業の裏作として  参加2年目で、昨年に新規就農した木下貴晴さん(44・羽布町在住)は、「シイタケを作る人がどんどん減っている状況ですが、農業の裏作としてやってみたい。架線を張って集材するような高度な仕事は一人では難しいですが、仲間を集めてグループでやれば出来るはずです」と意欲をみせる。


農業の裏作としてシイタケ栽培に挑戦する意欲を見せる木下さん


山林の衰退を放っておけない

「特に乾シイタケには、薬効があるといって、病気でお悩みの方がリピーターになり愛用して下さったこともありました。喜んでもらえるありがたい仕事に就いたと思います。山林の衰退を放っておくことはできません。これからは、新たな人、技術、環境で、新たな原木シイタケ栽培の実現を目指して欲しい」と
近藤さんは思いを語る。

 今年の秋には待ちに待った収穫が始まる。持ち山のない参加者同士では、一箇所のホダ場で共同出荷をしよう、という話も出ている。近藤さんの想いが実を結ぶよう、そして森の恵みを活かして豊かに暮らす人が増えていくよう、森林部会として今後も研修を継続していきたい。
(坂部友隆)

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