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「個人の社会」から「ともに生きる社会へ」

2017年10月03日

第2部の登壇者は、左から高野雅夫さん、鈴木辰吉、澁澤寿一(しぶさわじゅいち)さん、内山節(うちやまたかし)さん、戸田育代さん、太田稔彦(おおたとしひこ)豊田市長


おいでん・さんそんセンターは、平成25年から豊田市役所の出先機関として運営してきましたが、今年4月より、一般社団法人おいでん・さんそんとして民営化しました。
これを記念し、9月13日(水)に足助交流館の飯盛座で、シンポジウムを主催しました。
平日、18時からの開始にも関わらず、募集人数250名に対し、262名の方が参加。4割が市外からの申込みです。
基調講演は、哲学者の内山節(うちやまたかし)さん。「結び合う社会と日本の未来」と題してお話いただきました。
その後、第2部では、「持続可能な社会に」をテーマに、6名がディスカッションを行いました。

基調講演を依頼した理由

1950年東京に生まれた内山さんは、1960年代後半から70年代はじめ、若者たちのいわゆる「異議申し立て」が世界であふれた時代、その渦中で経済学的・哲学的な思索を深め、「労働過程論ノート」を著します。
高度経済成長期が終焉する1980~90年代には、「自然哲学」「近代的思惟(しい)の批判」を展開。また、森林分野での実践活動と思索は関係者に大きな影響を与えました。
自然に寄り添い、その持続可能なあり方を説く考え方に、おいでん・さんそん運営メンバーも、深く共感し、今回の登壇をお願いしました。
以下、内山さんの基調講演を要約します。


内山節(うちやまたかし)さん
哲学者・立教大学大学院前教授
NPO法人森づくりフォーラム代表理事
1950年東京都世田谷区生まれ
1970年頃から、東京と群馬県上野村を
行ったり来たりして暮らしている
主な著書:
森にかよう道(1994年新潮社)
「里」という思想(2005年新潮社)
共同体の基礎理論(2010年農文協)
新・幸福論(2013年新潮社)


上野村の変化


50年ほど前から上野村と出合い、東京にいたり村にいたりという生活を続けています。上野村の現在の生活が1256人くらい。人口の2割以上がIターンです。婚姻率も、出生率も群馬県内で一位。一年ほど前の中学生の意識調査では、100%が将来上野村で暮らしたいと答えています。
50年前と比べると「田舎暮らし」がごく普通の現象になってきています。Iターン希望の側も、田舎に来て何がしたいのかが問われ、地域の側も、それに対応したやり方を考えなければならない時代になってきています。

個人の社会の幻想が崩壊

近代社会は、個人が競争して結果社会全体が豊かになるというモデルで動いていました。先先進国が世界の富を独占していたことで、膨らんだ財政規模が個人の社会の問題点をカバーしていました。
第1次オイルショックをきっかけに1980年代くらいから途上国も経済発展したことで、先進国が財政的に厳しくなり、個人の社会の限界感が露呈してきました。。

ともに生きる社会の模索

アメリカの大統領のように「もう一度強い世界へ」という動きの一方、ともに生きる社会を模索する動きもあります。フランスでは1980年代以降、都市から農山村に引っ越す人たちが続々と出てきて、ローカリズムが進んでいます。地域社会の中で役割を持ちながら皆で地域を守っていくことで、ひとりひとりが価値ある人間として生きることができると言っている人が圧倒的に多いです。
アメリカでも、メディアには出てきませんが、企業の株を従業員が買い取って、労働者兼オーナーになる従業員共同所有事業体という企業形態が広がっています。単に儲ける場ではなく、みんなの生きる場として持続させるため、信頼される会社になることを追求しています。
日本の場合でも、社会的な使命を実現するために企業をつくるソーシャルビジネス起業が発生していたり、新しいコミュニティーをもう一度作り直そうという動きもあります。

現在に合った伝統統回帰

自然のなかで共に生きるという考え方は、伝統回帰と言ってもいい。近代の綻びを修正しようという動きがこういう形で起こっていると思います。昔の形に戻すことはできないので、社会のあり方、暮らし方に合わせて、地域にあったやり方で方向性を見つけ出すのがこれからの課題。それを主導していくのは、行政ではなく住民です。

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第2部に登壇したのは、コーディネーター高野雅夫氏(名古屋大学教授)、パネラーとして戸田育代氏(Iターン女子)、澁澤寿一氏(認定NPO共存の森ネットワーク理事長)、内山節氏(哲学者)、太田稔彦氏(豊田市長)、鈴木辰吉(センター長)の6名。
冒頭には、鈴木センター長が支え合って地域を持続するために始まった2つの事例を紹介。足助地区にオープンした精神障がい者デイサービス型地域活動支援センター「畦道」、足助高校、獣肉処理施設の山恵、ココ壱番屋を展開する㈱ワイズの3者が開発した猪肉キーマカレーについて話しました。
7年前に、旭地区に移住した戸田さんは、地域、自然の中で子育てする中で生まれた短歌を紹介。
東京都世田谷区在住の澁澤さんは、7年続けている教育委員の経験から情緒障がいの子どもが増加していること、その原因が家族の崩壊にあるのではないかということを指摘。巨大団地では、買い物難民が増え、会社を定年し、社会との接点が切れた人たちがデパ地下、大手電器量販店と図書館に溢れかえる現状を「問題は圧倒的に都市にある」と述べました。同時に、都市と農山村を両方のある豊田市で、おいでん・さんそんセンターがあることで最先端の社会実験ができる可能性について触れました。
太田市長は、センターの取組について、「好きな領域」だが、いつまでも行政が関与し続けることで良いことは無いとの想いがあった。そのため、3年での民営化というストーリーを当初から描いていたことを告白。これからのセンターの活躍も、距離を置いたところから応援しているとエールを送りました。
 内山さんは、群馬県で100年後を見据えて総合計画を作ったら、5年計画とは、がらっと変わったという実例を紹介。100年後に、何を残しておいたら今生まれた人が高齢になった時に困らないかの観点から、『自然』、『コミュニティ』、『第一次産業』、『手仕事』を残す思想になったと語りました。討論会の最後には、「色んな試みをやって、時に失敗しても失敗を楽しむことを積み上げていくことが、これからの新しい社会を作っていく」と参加者の皆さんに語りました。

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第2部終了後に、法人への入会のお願いをさせていただいたところ、23の個人、団体からお申込みをいただくことができました。また、会場で販売した猪肉キーマカレーは、86個お買い上げいただくことができました。 ここに改めて感謝申しあげます。なお、基調講演、第2部ともに、全ての内容を書き起こしてホームページに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。(木浦幸加)



戸田育代さんの子育て短歌紹介「ばあちゃんの 鮮やかな手つき見ていたら 柿むきやりたい 気持ちむくむく」

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