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移住しなくても地域を元気にする「関係人口」の可能性

2018年01月04日

2017年11月稲橋財産区の作業林道にて撮影。右から2人目が伊達剛さん、左端がトヨタケ工業㈱横田社長。


 おいでん・さんそんセンターは今年度、移住プロモーションに力を入れ、「いなか暮らし博覧会」の開催や、移住PR冊子「脈々と」の発行などの取り組みをしてきました。昨年12月までに70名が空き家情報バンクを利用して移住しています。
 移住・定住人口を増やすと同時に、センターが今注目しているのが『関係人口』です。まだ一般的になじみのない言葉ですが、関係人口とは簡単に言うと「地域に多様に関わる人々」のこと。山村地域が好きだけれど、移住はハードルが高い、移住するつもりはないけれど、定期的に通いたい。そんな人たちを表すのが関係人口です。
 明治大学の小田切徳美教授は関係人口を「農村に対して多様な関心を持ち、多様に関わる人々の称」と定義し、日本農業新聞に「農村関係人口の可能性」というタイトルで寄稿されています。この中で小田切さんは、移住ばかりが注目されているが、実態を見れば、人々の農村への関わりは段階的であるとして、例えば①地域の特産品の購入→②地域への寄付→③頻繁な訪問(リピーター)→④地域でのボランティア活動→⑤準定住(年間のうち一定期間住む、二地域居住)→⑥移住・定住という、「関わりの段階」があると指摘しています。このことは、ローカルジャーナリスト田中輝美さんの著作「関係人口をつくる〜定住でも交流でもないローカルイノベーション」の中でも紹介されています。
 これまで、おいでん・さんそんSHOWでも度々取り上げてきたように、移住者が地域を元気にしている例は、豊田市の山村部でたくさんあります。しかし、住んでいなくても関係人口として地域の活力になっている例がすでにあるのではないかと調べてみました。今回、3つの例をご紹介します。


今回参考にさせていただいた関係人口の本


自転車文化の普及を稲武で―伊達剛(だてつよし)さんの場合

 NPO法人チャリンコ活用推進研究会代表の伊達さんは、名古屋市出身で、一昨年、常滑市に移住しました。2015年に足助地区で開催された自転車のライドイベント「グルメセンチュリーライド」で、稲武地区で自動車のシートを製造するトヨタケ工業㈱の横田幸史朗(よこたこうしろう)社長と出会い、マウンテンバイクの話題で意気投合します。
 後日、横田社長を訪れ、稲武地区の自然環境の素晴らしさ、名古屋市や豊田市街地からのアクセスの良さに可能性を感じました。その後、地方創生の政策コンテストで、稲武地区をフィールドとして都市と山村を結ぶ自転車文化創出のための事業案を提出。その案が優秀政策賞を受賞し、現在トヨタケ工業㈱と協働で「イナブベースプロジェクト」を進行中。都市部の自転車愛好者らと稲武地区でマウンテンバイクトレイル整備をしたり、交流企画を行っています。

稲武地区のファンとして定期的に訪問―光岡真里(みつおかまり)さんの場合

 名古屋市在住で、普段はお勤めとサロン経営をされている光岡真里(みつおかまり)さん。春から秋にかけては1〜2ヶ月に1度は稲武地区に通っています。きっかけは2015年に稲武地区で草木染めと焼き菓子の工房を営む友人と出会ったこと。定期的に友人を訪問し、草刈りやイベントの手伝いをしています。
 稲武地区のファンになり、どんぐり工房での講座に参加したり、ブルーベリー狩りや、カフェに名古屋の友人を連れて行ったり、薦めたりもしています。
 「魅力的な人とのつながり、ものづくりをしたり、自然と共生している人々の暮らしに憧れがあり、応援したいと思っています」と話しています。


光岡さん(右)と稲武地区に住む友人


休日に森林整備ー袋真司さんの場合

 みよし市在住。トヨタ自動車㈱に勤務する袋真司さんは、2013年から約一年間、豊森なりわい塾(トヨタ自動車、特定非営利活動法人地域の未来志援センター、豊田市による三者協働事業)を受講しました。 そこで森林の課題について学び、人工林の間伐が進んでいない現状を目の当たりにしました。卒塾後、とよた森林学校主催の初級間伐講座に参加。修了後に「とよた旭七森会」という間伐ボランティアグループ(矢作川水系森林ボランティア協議会所属)を立ち上げ、休日に仲間と一緒に旭地区の山に入り、地域の方と関わりながら間伐を進めています。


仲間と共に間伐に間伐に取り組む袋さん


関係人口の可能性

 今年、おいでん・さんそんセンターは、移住をさらに推し進める活動と同時に、紹介した3人のよう「移住しなくても、地域に関わる」関係人口の増加にも力を入れていきたいと考えています。関係人口を増やすことは、他の自治体と人口の奪い合いをすることなく、地域と、地域に関わりたい人をつなぐことができる可能性に満ちています。(木浦幸加)

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