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野菜づくりで守り抜く、ふるさとの景色

2018年11月06日

10月19日(金)に野菜を出荷したしもやま高原野菜協議会のメンバー


 豊田市山村部の販売農家は2010年の時点で約1500戸。10年前と比べると、およそ3分の2に減少しています。
 そのうち65歳以上が8割を占め、今後の担い手不足と耕作放棄地の増加が心配されます。農家が減っている一方、最近スーパーで人気があるのが、地元で採れた「地場野菜」のコーナー。これがあることで、売り場全体の売上が伸びる要因にもなるそうです。 

 昨年9月に豊田市広路町にオープンしたイオンスタイル豊田も例外ではなく、地場野菜コーナーを設けています。ひときわ目立っているのが『豊田しもやま高原野菜』の看板。 出荷をしているのは、しもやま高原野菜協議会。代表の木下貴晴さん(44歳)、メンバーの松田敏明さん(71歳)に販売までの経緯と、活動内容について伺いました。

イオンスタイル豊田に下山地区の野菜を

 「イオンスタイル豊田に販売するための野菜を出荷してくれませんか、と公設卸売市場に店を構える仲卸業者から相談を受けました」と松田さん。 量や、配送の手間を考えると、個人での出荷は難しいため、しもやま高原野菜協議会を発足。地元の出荷者25名ほどが登録し、昨年の9月から出荷を始めています。
 
 12月中旬から3月を除いて、毎週月曜と金曜に松田さんの自宅ガレージで集荷します。その後、都合のつくメンバーが軽トラックで豊田市公設卸売市場まで運ます。ガソリン代は、出荷者の売上から集める手数料でまかなっています。


イオンスタイル豊田の店頭に並ぶ しもやま高原野菜


 袋詰めされた野菜に貼ってある『しもやま高原野菜協議会』のシールは、この出荷の時だけしか貼ることができません。協議会で品質を確認したものだけに貼り、ブランドの価値を作っていくことが狙いです。 

 出荷を始めて一年。これまでを振り返り、どんなことが良かったか聞いてみると三つ教えてくれました。  

廃棄せずにお金になる

 一つ目は、出荷した野菜が、必ずお金になること。多い時には、月の売り上げが約90万円ありました。

「仲卸業者は、イオンスタイル豊田以外にも売り先をいくつも持っているため、どんなに同じ種類の野菜が多くても買い取ってくれます。傷があったとして
も、給食センターや漬物工場などに加工用として販売してくれるそうで、ありがたいです」と木下さん。

 協議会ができる以前は、自宅用で食べきれない野菜は廃棄していました。それを捨てずに済んで、しかもお金になることでやりがいに繋がっています。

毎週顔を合わせて井戸端会議

 二つ目は、集荷の日に必ず顔を合わせること。出荷する農家のほとんどが70〜80代の女性。 取材当日、次々に軽トラックが集荷場に横付けされ、荷下ろしを終えたお母さんたちは、早速、井戸端会議を始めました。

 「きれいな小松菜だねぇ」、「これ、何ていう名前の野菜?」、「これ誰のさつまいも?」松田さんが収穫して蒸したサツマイモをほおばりながら、終始賑やかに情報交換をしていました。


 下山地区内で牧場を営み、今年から協議会に参加している30代の志賀祐子さんは、「まだ野菜づくりを始めて間もないので、色々と教えてもらえて楽しいです」と笑顔を見せます。


意気揚々と出荷する農家のお母さん


野菜を育てるモチベーションアップ

 三つ目は、新しい野菜づくりにチャレンジできることだと松田さんは話します。
 「売り場に並べるからには、お客さんに喜んでもらえるように多品目の野菜を出すことを協議会として心がけています」。生姜、菊芋、カブ、セロリ、里芋、サツマイモ、インゲン、長ネギ、アケビ、チンゲンサイなど、比較的野菜が少ないと言われる10月でも、これだけの種類が出ていました。
 
「みんな腕が良いよ。きれいな野菜は全て出荷に回すから、『自宅で食べる野菜がクズばっかりになる』とお嫁さんが嘆いているそうです(笑)」


たくさんの野菜を出荷している様子


出荷された野菜と伝票をチェック


ふるさとの景観を守る

今後の課題は、協議会のメンバーをどう維持していくか。
 「高齢のため、出荷ができなくなってしまった人もいます」と松田さん。今年の4月に就農したばかりの木下さんを、協議会の代表に推薦したのは、若い世代の求心力になってほしいという期待からです。


 木下さんの今後の抱負は、この協議会をとにかく持続していくこと。「耕作放棄を防ぎ、ふるさとの景観を維持していくことが、売り上げを得る以上に意義のあることです」と、揺るぎない信念があります。
 農地を守ることは、地域をつなぐこと。こうした取組が山村部全体に広がることを期待します。(木浦幸加)


木下貴晴(きのしたたかはる)さん(左)と 松田敏明(まつだとしあき)さん(右)

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