おいでん・さんそんセンター

トヨタマンが休日きこりになった理由 袋真司さん(42歳)

ハロウィンを翌週に控えた10月のある週末。豊田市旭地区惣田町の山で、袋真司さん(以下、袋さん)にお話を伺いました。
「ハロウィンの仮装でおもちゃのチェーンソーを持って歩いていた人が通報されたというニュースが最近ありましたね。やりすぎですよねー(笑)僕のは、最近買った本物のチェーンソーです(笑)」そんな世間話をしながら、慣れた様子で間伐作業用の用具を身に付ける袋さん。ヘルメットに、防護めがね、チャップスと呼ばれるチェーンソーの回転を瞬時に止める保護ズボンなど、本格的な装備をして軽々と山を上がっていきます。一見すると、「きこり」が本職のように見えますが、そうではありません。平日は、トヨタ自動車㈱の社員として働く「トヨタマン」、休日に山に入り間伐をしています。間伐とは、混み合った森林から間引きをし、森林の中を明るくするための作業。袋さんは2015年1月に「とよた旭七森会」という間伐ボランティアグループを立ち上げ、仲間と共に活動しています。


チェーンソーで木を伐る袋さん。写真だけだとプロのように見えます。


「トヨタマン」と「きこり」が影響し合うこと


平日は「トヨタマン」、休日は「きこり」。森林面積約68パーセントの豊田市だからこそ、叶えられるライフスタイルを送る袋さん。最初に「トヨタマン」と「きこり」がお互いに影響を与えることはあるのかを聞いてみました。
「『きこり』が平日の仕事に影響を与えていることと言えば、リフレッシュの一言に尽きます。『トヨタマン』が間伐に影響していることは…“段取り”と“安全”ですね。仕事では、耳にタコができるくらい社内で聞くキーワードなので、身体に染みついているのだと思います(笑)。どの木をどこに倒していけば、全体が上手く伐っていけるかという“段取り”を組むことは仕事で使う能力が活かされていると思います。僕らは、ボランティアでやっているので、作業でケガをしたら何にも面白くない。“安全”を第一にするため、仲間との声掛けは常にやっています。」


木を倒す作業は、チームワークが何よりも大事


森の中に立ち、空を見上げ「伐ったところに、スポットライトみたいに光が入ってくるんです。とにかく気持ちがいい。」とさわやかな笑顔で語る袋さんですが、ご自身が間伐をやるようになるとは全く思っていなかったとのこと。きっかけは何だったのでしょうか。


木を倒したところから見えるようになった空を仲間と見上げる袋さん


「豊森なりわい塾」受講後、間伐を初体験


豊森なりわい塾受講中の様子


2013年6月から2014年の3月にかけて、豊田市、トヨタ自動車㈱、NPO地域の未来・志援センターの三者が協働で運営している「豊森なりわい塾」(以下、豊森)の第三期を受講していた袋さん。豊田市旭地区をフィールドに、集落の自然や暮らしを学びました。人工林の間伐が進んでいない現状も目の当たりにしますが、そのことがすぐに間伐ボランティアの立ち上げにつながったわけではありませんでした。


卒塾からしばらく経った2014年4月。豊森の事務局スタッフのSさんがご自身の住む岐阜県中津川市蛭川で『間伐・薪割り体験と春の里山散策』というイベントを開催。袋さんはそこで初めてチェーンソーでの間伐を体験します。
「とにかく面白い!木の混み具合を見てどこに倒したらいいかを計算するんですが、思い通りの方向に倒れた時には最高に気持ちがいいんです。スポーツ感覚でできて、すっかりはまってしまいました。」間伐の面白さに目覚めた袋さんは、技術を身に付けるため、とよた森林学校主催の初級間伐講座を受けます。


間伐ボランティアグループ「とよた旭七森会」立ち上げ


「講座を受講中に、すでに活動している間伐ボランティアグループで一緒に作業をさせてもらったのですが、せっかくなら新しい仲間とゼロから活動をスタートしたいと思い、とよた旭七森会を立ち上げました。」袋さんの人望もあり初級間伐講座を受講した20名のうち14名もの方がグループに入ることになりました。とよた旭七森会は、他の間伐ボランティアグループと同様「矢作川水系森林ボランティア協議会」に所属しています。


「とよた旭七森会」の仲間たちと


現在、間伐をしているのは豊田市旭地区の惣田町の山。市町村の所有する「公有林」ではなく、山主さんの持つ「私有林」です。豊森なりわい塾受講中に惣田町の祭りにも参加し、顔を覚えてもらっていた袋さんは、間伐をするフィールドを探していた時に、地域の方から今の山主さんを紹介してもらうことができました。惣田町の山で間伐を始めて1年。「面白い」とはまた違った想いが芽生えているといいます。
「1年間この山の間伐を続けてきて、伐れたのは全体の3割くらい。間伐ってすごく時間がかかるんだということを実感しました。間伐が必要なのは、ここだけじゃない。僕たちが全てをやることは到底無理な話です(笑)。でもこの山に光が入って気持ちの良い場所になったら、他の山主さんが『うちの山は、真っ暗だ。何とかしなきゃ』と思ってくれるかもしれない。もしそうなったら、間伐ボランティアグループとして手伝いに行くこともできます。ここで活動し続けることで、少しずつ地域に影響を与えていけたらいいなと思っています。」


1年間伐を続けてきて、ずいぶん光が入るようになってきた山


平日はトヨタ自動車㈱に勤め、休日はリフレッシュしながら森林環境の保全のために間伐をする袋さん。平日も、休日も仲間に囲まれながらいきいきと過ごす袋さんは「自分を1つの枠にあてはめない」新しいライフスタイルの実践者だと感じました。
2005年の合併により、豊田市は袋さんのように休日に平日とは違う「もう1人の私」を叶えるステージとなり得る広大な山里を有するようになりました。あなたも山里で「もう1人の私」探してみませんか?(取材:木浦幸加)


「もう1人の私」を探す第一歩!まずは、下記を検索してみてください。


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