これからも推し進めていく自治の営み~8年間センター長を務めた鈴木と新センター長・田中の対談

この度、当センターは鈴木辰吉に代わり、田中茂樹を新しくセンター長として迎えることになりました。2013年8月の設立当初から8年間、任務を全うしてきた鈴木は、センターを運営する(一社)おいでん・さんそんの代表理事として在籍することになります。
今回の特集では、旧センター長鈴木にこれまでの8年間の振り返りをしてもらいました。また、新センター長田中には、これまでの豊田市役所での経験について聞きました。そして両名に、これからのおいでん・さんそんセンターについて熱く語ってもらいました。

8年で見えてきたこと

ーまずは鈴木前センター長、これまでの8年間を振り返ってください。

鈴木 8年で見えてきたことが主に2つあります。一つ目は、中間支援が有効だということ。センターを立ち上げた当初中間支援が課題解決、農村の過疎化、集落の消滅等に対してどんな役割を果たしていけるかというのはわかりませんでした。8年で都市部と山村地域のマッチングを350件くらいやってきた中で、株式会社ワイズ、足助高校、獣肉処理施設山恵がコラボしてできた猪肉カレーなど代表的な事例が出てきました。中間支援というのは効果があるという確信が持てました。2017年には、(一社)おいでん・さんそんが運営する形で民営化し、官の信用と民間の迅速さ、柔軟性、専門性をミックスしたことで良い成果が出たと思っています。もうひとつわかったことは自治の営みが持続可能な地域や社会をつくるということ。

過疎地に移住者を受け入れることで、人口の減少が抑えられます。そのためには大家さんに空き家を提供してもらわなければならない。普通だったら個人の財産にものを言うなんてことはしないものだが、それをしなければ集落が消滅に向かってしまう。それでは困るということで集落全体で空き家を貸してもらうように頼む。自分たちで自分たちの集落の未来を真剣に考えることができてはじめて移住者を迎えることができます。センターは、例えば「空き家にあかりをプロジェクト」などで、山村地域が自治を取り戻すお手伝いをしてきました。

最近は、自分たちだけでがんばり続けることが自治ではないということもわかってきました。今年の2月に主催した「いなかとまちのくるま座ミーティング」でお招きした井上岳一さんが「自立するということは、たくさんの依存先があるということ」だと言っていました。地域で言うなら関係人口など支援してくれる人・団体を増やすことで、「自治できる」ことにつながります。

センターが取り組んできた豊森なりわい塾やミライの職業訓練校などの人材育成事業を卒業した人の中には、地域のサポーターになる人が出てきました。地域の自治のために、人材育成には今後さらに力を入れていく必要があると思っています。


2013年8月のセンター開所式の様子


地域の移住定住勉強会で出前講座を行ってきた


人材育成事業「豊森なりわい塾」の様子

田中新センター長のこれまで

ー田中センター長は市役所でどのような業務に取り組んでいましたか?
 
田中 「WE LOVE とよた条例」という条例作りに携わっていました。この条例は以下の3つが基本理念です。①互いを尊重しながら、とよたの魅力を自由に楽しみます。②とよたの魅力を周りの人々に伝え、共に楽しみます。③互いに協力しながら、とよたをもっと楽しくします。

この条例はとよたの魅力を次の世代に引き継いで持続可能なまちを実現する条例で、このまちをもっと良くしよう、楽しくしようという思いのある多くの市民の方に参加してもらって議論しました。その時にセンターにも声をかけて山村地域の人を紹介してもらいました。参加者のみなさんが真剣に考えてくださって条例ができました。ひとつひとつの言葉に市民の想いがこもっている条例ができたかなと思っています。

福祉の業務にも携わってきました。福祉の仕事は大変な仕事と言うイメージがあって確かに現場は大変。しかし福祉というのは行政においては基本の仕事だと感じていました。現在の福祉は困っている方を福祉サービスで支えるだけではありません。どんな人もひとつの個性として社会に関わり続けていきましょうということを推進していくことで自立支援を行う、そんな福祉の仕事に携われるということに充実感を感じていました。


「WE LOVEとよた条例」について掲載された冊子

田中新センター長へ期待すること

ー鈴木代表理事から田中センター長に期待することは?

鈴木 「WE LOVE とよた条例」は豊田市民自らが豊田市を「わくわくする世界一楽しいふるさと」にしていくために制定されました。これは、自治を取り戻すための条例でそれを作った張本人が田中茂樹さんという人。田中さんがやってきたことは、センターが今後も推進していく「自治を取り戻す」ことと重なります。田中さんの経験に期待したいと思います。

センターはこの8年間、スタッフそれぞれのネットワークや知見を最大限生かしてきました。田中さんが入ったことで、センターの持つネットワークはさらに広がることになるでしょう。また、私は生まれも育ちも旭地区ですが、田中さんは豊田市のまちから通うことになります。都市からの新しい視点でセンターに新たな風を吹かせてくれることも期待しています。

今後に向けての抱負

ー今後、センターで取り組んでみたいことを教えて下さい。

田中 都市側に住む人間として地域を見ると、自治の担い手が確保しづらくなっていることを感じます。一方で豊田市の山村部の自治は地縁、人間関係がしっかりしており、学べることが多い。この山村地域の自治のあり方をまち全体に広げていけるような取組をしていけたらと思っています。

これまで8年間、鈴木さんを中心としてセンターのみなさんが築いてきた実績は非常に重要な財産だと感じています。この成果に都市側の人間としての視点を加えた活動を行っていくことで、まちといなか双方の市民が「豊田市に住んでいてよかった」と思える未来を実現したい。みなさんと相談しながら、できることを進めていこうと思います。(取材 川端洸平)