コロナ後の社会を山村で考える~第10期豊森なりわい塾が公募の塾生20名でスタート

令和3年度第10期豊森なりわい塾がいよいよ始動しました。今期の入塾者は20歳代から60歳代までの20名。昨年はコロナウィルス感染拡大防止の社会的要請から、令和2年度の新規入塾生の受け入れを断念したうえ、今年度は4月に発出された愛知県緊急事態宣言に伴い、実に1年と1か月遅れのスタートとなりました。

6月26日(土)入塾式。豊森実行委員会を代表し、専任講師の駒宮博男(こまみやひろお)さんは「東日本大震災、リーマンショック、そしてコロナ禍。大変な時代の中で実施されてきたこの塾に、何か世の中に違和感を感じている方が集ったのではないか。コロナ後の社会は、コロナ前の社会に戻るというものではない。これからの社会の最先端を、共に考えていきましょう!」と挨拶しました。

山村地域に持続可能性の本質がある

太田稔彦(おおたとしひこ)豊田市長は塾生に向けたあいさつの中で、「豊田市は都市と山村との共生というテーマを持っている。これからの時代、もっと便利に、もっと豊かにと追い求め続けるのはありえない。持続可能性やスマートライフを考えるのなら、むしろ豊田市の山村地域の暮らしに本質があるのではないか、と私は思い続けている。中国等では都市と山村とは300~400km離れているが、豊田市ではせいぜい30~40kmで桁が違う。その中で都市と山村とを分けて考える意味がどれほどあるだろうか。山村に関心を持つ塾生の皆さんにとって、暮らしの選択肢は日本全国にたくさんあるが、孤立した山村なのか、都市とのアクセスも可能な山村なのか。私は絶対に豊田市をお勧めしたい。豊森で地域の方の生の声を聞きとって、どうぞ皆さんのライフスタイルを実現する場として選択をしてみてはいかがでしょうか。住民票はいつでも受け付けます(笑)」と語りました。


多様な人材が変化を起こす

トヨタ産業技術記念館館長の大洞和彦(おおほらかずひこ)さんは、トヨタ自動車(株)が、里山の再生や循環型社会の活動をしている講師を招いた「エコの森セミナー」を実施していたこと、その社会貢献活動が豊森のルーツになったことについて説明しました。

また、「豊森は地域に入る作法や暮らしを作ることを大切にしている。地域に多様な人が関わることで、変化が起きる。どうぞ今日から積極的に関わっていってほしい」と激励しました。

塾生代表の意気込み

第10期塾生を代表し最年少の岡田ゆりさんは、「学生時代から様々な活動に取り組んできたが、コロナ禍で交流が減りわくわくが足りないと感じている。募集説明会で卒塾生が山村地域へ移住したり、みつばちのワークショップを開催したりと、楽しそうに自分のフィールドを広げている話を聴いた。私も講座を通じて多様な皆さんと関わり、自分らしい生き方やキャリアを考え、次の行動につなげていけるよう楽しんで学んでいきたい」と講座に向けた意気込みをいきいきと語りました。


第1回講座 地域を知り地域に学ぶ

入塾式の後、早速第1回講座『地域を知り、地域に学ぶ~地元学』が始まりました。(一社)おいでん・さんそん鈴木辰吉(すずきたつよし)代表理事は、自身が生まれ育った旭地区押井町のかつての暮らしぶりを紹介。また、合併後の豊田市の山村地域の特徴についてもレクチャーしました。数千年間、人々の営みが続いてきた押井町について学んだことで、持続可能な暮らしを考えるきっかけとなったのではないでしょうか。

次に、澁澤寿一(しぶさわじゅいち)豊森実行委員長が、東京からオンラインでレクチャーしました。東北地方のマタギ(山間に暮らす狩人)が語った「山は狩猟の場でもあり、山野草を食料にしたり薬にしたりした。山さえあれば生きていける」という言葉が紹介されました。

塾生からは「生きるために働くこととお金を稼ぐために働くことの違いについて考えさせられた」、「これまで言語化できなかった、今の社会に対するモヤモヤの糸口を見つけた気がする」との感想が聞かれました。

午後からは今期お世話になる下山地区羽布町と足助地区五反田町のフィールドワークへ行きました。地域の皆さんにご案内いただき、実際に「あるく・みる・きく」ことで、集落の地形や成り立ち、農的暮らしや水の利用などを五感で感じる時間を過ごしました。 塾生からは「ただ自然が豊かなだけではなく、しっかりと人の手が入った里山を見て、安心して住める人のエリアが作られていることに気付いた」、「語り手を通すことで、普段は通り過ぎてしまう山村の風景から全く違う景色と価値が見えてきた」と、地域は人々の暮らしそのものであることに気付いたという感想が寄せられました。



グループワークで深める

2日目は1日目のフィールドワークで感じたことをグループで話し合い、午後からはグループ毎に発表を行いました。 同じ景色でも、人によって見る視点が違うこと。同じ山村地域といわれる下山地区と足助地区でも、歴史的な背景や文化が違うこと。実際に自分の五感で感じた地域と、訪れていない地域とでは、関心度が変わってくることなど、地域に入ったからこそ得られた学びが共有されました。
 第1回講座のまとめとして駒宮さんのレクチャー『いまなぜ地域か~グローバルからローカルへ』がありました。塾生からは「グローバリゼーションによる社会問題や、持続可能な地域を同時多発的につくること、自治が重要ということに気付いた」、「具体的にどんな自治を行うことが解決策になるのか、多様性を受け入れる地域が持続可能なのか学んでいきたい」との感想が多く聞かれました。
 2日間の講座を通し、塾生の皆さんは豊田市や山村地域への視点、羽布町と五反田町のフィールドワークによる感覚、そして1年間を共に学ぶ仲間を得られたと思います。今後の学び合いと、つながり合うことで生まれる「何か」に、心から期待しています!(松本真実)

【豊森なりわい塾とは】
 塾生を公募し、1年間豊田市の山村地域をフィールドに、実際に「あるく・みる・きく」ことを通して学び、いっしょに、これからの生き方、働き方、社会のカタチを考える塾。トヨタ自動車(株)、NPO法人地域の未来・志援センター、豊田市が実行委員会に参画し、官民の共働事業として2009年にスタート。これまでの9期11年で200名以上の卒塾生を輩出している。
 2019年より(一社)おいでん・さんそんが事務局として参加。令和2年度は新型コロナウイルスの影響により例年通りの講座開催を断念し、卒塾生向けのオンライン講座「豊森サロン」を実施した。