アイデアを持ち寄り煮込む?スープ会議~市内で福祉事業を展開する株式会社スマイリング主催の市民会議


コロナ禍で色々な集まりが停止しました。直に話せば伝え合える微細な想いも、リモートだと伝わりにくいじれったさを感じていた時。アイデアを持ち寄って、自分たちのまちのことを考えていこう、という連続ワークショップのお知らせが入りました。おおよそ公的なところが主催することの多かったまちづくりの企画を、なんと『スープ会議』というおしゃれなネーミングで、民間の事業所がやるというのです。スープ会議、スープタウン構想、聞いただけで暖かな場のイメージが湧いてきてワクワクしました。 

主催は「NPO法人おんぶにだっこ」と松平・下山地区をはじめ市内で福祉事業を展開する株式会社スマイリングです。

「NPO法人おんぶにだっこ」は、高齢者の活躍をサポートし、高齢者が若者を支えるという逆転発想で地域づくりを応援するスマイリングのプロジェクトから生まれたNPO法人です。高齢者が子ども食堂の料理を提供する「ビストロ・スマイリング」の運営のほか、地域において人と人とのつながりをデザインする「社会的処方研究所あいち」の取り組みも行っています。
 株式会社スマイリングは、2013年松平地区に「デイサービススマイリング」を開設。現在は高齢者デイサービス事業所5か所、就労継続支援事業B型事業所2か所、企業先導型保育園事業、訪問看護事業、ソーシャルクリエイト事業などを運営しています。就労継続支援事業B型としてスタートした「スマイリングキッチンLABO」、「久遠チョコレート豊田店」が話題です。

スープが冷めない距離で暮らそう

松平にあるデイサービススマイリングの隣地を活用し複合施設を作る計画があり、それを地域住民と共に考えたいとスープ会議は計画されました。そのため、今回は松平・下山地区の住民や所縁のある方たちが中心となりました。

スープの冷めないくらいの人と人との距離感や、スープのような暖かさのある誰もが安心して暮らせる「スープなまち」。その要素をたくさん含んだ、住民たちの想いが詰まった新たな施設「スープタウン」構想。そしてスープ会議とは、スープタウン構想を実現するために、当事者たちがいろいろなアイデアを持ち寄って、グツグツコトコト煮込みながら話合う会議のことです。


第1回スープ会議

7月20日㈫。会場である松平地区中垣内町の「デイサービススマイリング」に37名が集まりました。

松平・下山の在住・在勤の方、移住定住に関わる人、中には高校生の姿も見えました。平日の夜ということで子育て中の親が参加しづらかったのは残念ですが、思った以上に多様な年齢層が集まりました。

スープ会議にちなんで、会議のしつらえもすべてスープ仕様。参加者の首にかけるネームプレート、テーブルに置かれたクロスの紙、アイデアを書くカードはスープの具材模様、それを入れる小さなスープカップなど。テーブルに置かれた愉快な仕掛けによって、今回のワークショップが堅苦しいものではなく、気軽に参加できる場なのだなと伝わってきます。

それぞれテーブルに分かれて座ると、ファシリテーターのウッチーこと、街づくりアドバイザーの内海慎一さんが進行していきます。呼んでほしい名前と最近はまっているものなどお互いに紹介した後、「自分の思い描くスープなまち(理想のまち)」のイメージを出し合いました。具材カードにアイデアを書きこみ、他の人のスープカップに入れて混ぜ合わせていきます。

参加者の方たちが考えたスープなまちは「世代に関係なく話せ、支え合える」、「やりたいことができる」、「誰でも参加できる交流の場がある」、「自分のできることで輝く場がある」、「自分のことが好きになれる」など、たくさんの意見が出ました。

途中のブレイクタイムは「スープブレイク」。スマイリングで作られた野菜が使用されいて、とても美味しいスープでした。

第2回スープ会議

8月17日㈫。自分語りから、つながりが生まれた回。
まずは前回のふりかえりから。第1回で参加者から出された意見をまとめたものを見ながら、改めてそれぞれが大事だと思うものを選び、考えを整理する作業をしました。

このワークで感じたのは、一人ひとりの意見をとても大切に扱ってもらう感覚。アンケートとして意見を出して終わりではなく、他の人の意見に自分の意見を重ねて具体像に近づけていく過程。まさに「スープを煮込む」作業です。

そして、参加者が普段取り組んでいることをシェアするワーク。「コトコト(少しづつじっくり取り組んでいること)」、「グツグツ(熱量をもって取り組んでいること)」。小さな一歩も大きなアクションも、同じ土俵に上げて語り合いました。丁寧な生活を大切にしたい人、仕事の幅を広げたい人、イベントをやりたい人、事業化したい人など。お互いを知ることで新しいアイデアや繋がりが広がっていく回となりました。

第3回スープ会議

緊急事態宣言を受けて延期され10月12日㈫。スマイリングの考えるスープタウン構想案が紹介されました。『食』を中心とした様々なニーズから、現在ある福祉事業所を含め、より入り口を広げてたくさんの方たちと繋がれるシステムへ。その広大さに驚きました。いよいよ具体的な話に入りつつあり、「スープなまち」で何がしたいか、デイサービススマイリング横の空き地を使った「スープタウン」で何がやりたいか、というアイデア出し。松平・下山在住、在勤の人が中心となって参加しているので、「自分たちのまち」としての構想を練っていく過程となりました。

高齢者のシェアハウス、災害に強い施設作り、地元産の農産物の調理方法を高齢者に教えてもらう場、足湯、冷凍おにぎり屋、集まれる場所の構築、レンタルスペース、ワーキングスペース、人と交流できるイベント、直通バス、防災食を楽しく、田舎暮らし体験、酒米作り、ショットバーなど。どんどんアイデアが出てきました。

次回の12月で最終回。この回のテーマは「スープタウンを創るために自分に何ができる?」。いよいよ大詰めです。

まちづくりのワークショップが、本当にポップに楽しく開催されることが驚きで、毎回参加するのが楽しみです。今回は松平・下山地区対象でしたが、色々な地域で応用できるように思いました。スープ会議はアイデアの持ち帰り自由です。どんな展開を見せるのか楽しみで仕方ありません。(小黒敦子)