山村条例と共に、市民みんなで目指すミライ〜豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例

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2022年1月1日、『豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例(略称:山村条例)』が施行されました。どのような内容で、どんな経緯で制定され、何を目的にしているのか。条例制定の担当部署、豊田市役所企画政策部の辻部長に、おいでん・さんそんセンター長の田中が聞きました。

都市と山村が共生する流れを止めない

田中 どのような経緯で制定されましたか。
辻部長 「都市と山村の共生によって、暮らしの豊かさを創造するまちにしていく」ということは平成17年の市町村合併の時からずっとまちづくりの中心に置いているコンセプトです。

行政としては、平成25年においでん・さんそんセンターを開所し、平成28年度から「山村地域の振興及び都市との共生に関する基本方針『おいでん・さんそんビジョン』に、令和3年度からは基本計画『おいでん・さんそんプラン』に基づいた取組を進めています。合併から17年が経ち、山村地域への移住定住や都市と山村の交流などが進んできました。この流れを普遍的なものにしていくため、今回検討委員になっていただいた市民の皆さんと条例制定に向けて内容を熱心に検討してきました。また、山村地域の中高生の皆さんとも意見交換を行いました。
田中 どんな内容の条例ですか。
辻部長 前文と9つの条文から成っています。都市と山村の共生のもと、持続的な山村地域づくりを実現していくために山村の価値を定義づけるとともに、取組の基本的な考え方、市民を始め各主体の責務・役割等について整理しています。豊田市のホームページでご覧いただけますので、ぜひ読んでみてください。


辻企画政策部長(左)と田中センター長(右)

田中 市民に期待することはどんなことですか?
辻部長 山村地域を次の世代につないでいくため、自分ならどんなことが楽しみながらできるのか、具体的に考えてみることから始めていただけたらと思います。
田中 おいでん・さんそんセンターにはどのような役割を期待しますか?
辻部長 ハードルが高いと感じる方にも、取り組めることが様々あることを紹介し、市民・団体・地域等をつなげたりすることを引き続き担って欲しいです。
田中 ありがとうございました。都市と山村が対等な関係でつながることができるように取り組んでいきたいと思います。

市民検討委員の皆さんの声

条例が制定された今、今後の豊田市についてどんな想いを持っているか。市民検討委員会に参加していた市民の皆さんからコメントをいただきました。

*都市部在住*

鬼木利恵さん【朝日丘地区】


私は、豊田市に7年前に引っ越してきました。その頃からこの地域で採れた野菜を食したいと松平の農家さんから自然農法の野菜を定期購入し始めたり、最近では旭でつくられているミネアサヒを定期購入したりと、食でつながっています。また、友人が稲武へ移住したことをきっかけに、夏場など遊びにいくことが増えました。普段、育児と仕事で忙しく、自然と触れることが少ない私にとって貴重な関わりです。

*山村条例に期待すること

私は株式会社eightというキャリア支援会社を経営しています。育児と仕事の両立や、セカンドキャリアを模索する人たちの支援をしてきました。山村条例の内容をみて、「生きがい」や「やりがい」を求めて働きたい人たちの選択肢が増えるのではないかと期待が膨らみました。
交流が増え、互いの信頼関係が深まれば、まちの人は山村の素晴らしい自然を、山村地域の人たちは、まちの人や情報を活用し様々なチャレンジができると思います。私自身も山村地域で何か新しいことにチャレンジしていきたいです。

栗本浩一さん【前林地区】


2021年3月から、豊田市の民間福祉事業所の有志(随時賛同者募集中)で「とよた多世代参加支援プロジェクト」という横連携の取り組みを始めました。社会福祉協議会を主軸に「地域で暮らす人の生活の困りごとを福祉サービスの利用者や事業所が主になって解決していく」というテーマで、意見交換や具体的な取り組みに関わっています。

*山村条例に期待すること

水を守ること、農業や田園風景の大切さ。暮らしぶり。こういったことが山村地域以外の人にも上手く伝わると良いと思います。これが、川の一番下流域で暮らす私や地域の子どもたちにとっての「地域の学び」に盛り込まれるようになる。「知る機会」を条例が後押ししてくれることを期待します。「とよた」に愛着が持てるように。

*山村地域在住*

高木伸泰さん【足助地区】


山村地域の足助地区にUターンし、妻・3人の子どもたちとともに、両親と同居して暮らしています。自営の有限会社タカキ工業でコンピュータプログラムの開発をしており、山村地域の事業者として山村条例の策定に関わりました。地域活動としては、あすけ聞き書き隊事務局として『足助の聞き書き集』を作成しています。また、あすけ通信編集委員会で行政との共働によるU・Iターン促進事業として『あすけ通信』の発行を行っています。

*山村条例に期待すること
山村地域の自然、暮らしの知恵・手技、生業は、かけがえのない豊田市の宝です。この思いが都市部を含めた市民全体の価値観として定着することを願っています。また、山村地域の事業者の活動は、日常の暮らしの土台になるとともに、災害対応など公益的な役割を担っています。事業が継続できるよう支えることが、市の責務として盛り込まれたことに意義を感じます。理念だけでなく、条例を踏まえた市、市民、事業者の実践活動に期待します。

長坂真理子さん【下山地区】


私は下山で育ちましたが、子どもの頃は田舎と言われることがとても嫌でした。しかし、今は子を産み育てる中で田舎の良さを感じています。四季それぞれの景色や香りを体全体で感じられ、夏は川で遊び、冬は山の枯れ木を拾い焚火をする。その火でごはんを作り食べる。歩き始めの子どもは、どんぐり拾いに夢中になり、転んでも土や草花がクッションになる。遊びのルールは子ども達が作り、変えていく。子どもも親も自然の中での暮らしや遊びで、生きていく為に必要な力が育まれています。ただ、高校進学は通学が壁となり選択肢が限られてしまうという課題もあります。

*山村条例に期待すること

私は条例の前文が好きです。改めて人は自然の中で生かされていると感じます。山の人は湧水がどうやって大きい川になっていくかを知っています。命の源である山や川や土。これらを山の人と街の人が共に知り、感じ、味わい次の世代につなげていけることを期待します。

古橋真人さん【稲武地区】


山で暮らす良さは、「自分しかできない生き方」ができることだと思います。私の実家は稲武地区を拠点とする豪農古橋家という江戸時代から続く家なのですが、そうした家やふるさとのストーリーに触れ、親孝行もでき、やがて全国に波及する課題がいち早く顕在化するフロンティアを開拓するというユニークな生き方ができます。一方で課題は、教育と交通だと思います。この部分はテクノロジーによる解決を期待したいです。

*山村条例に期待すること

「山村条例は山村住民だけを対象にしているわけではない」ことを、広く知っていただくことです。簡便さや損得計算だけで物事を判断していく先には、際限ない都市集中と、何事もスペックで決めて、何事もスペックで決まってしまう「誰にでもできる生き方」が待ち受けています。そうではなく、あえて「自分しかできない生き方」に目を向ける人が増えてくると、山村も都市も持続可能な社会になるのではないかと思います。

市民検討委員の皆さんを始め、多くの人の想いが込められて制定に至った今回の山村条例。これまで山村に関わってこなかった市民が、その存在に気付くための新たな契機になると感じました。(木浦幸加)




市民検討委員会の様子