「ソトのチカラと一緒に地域活性化」セミナー開催〜移住でも観光でもない新たな交流、関係人口とのミライの地域づくりを考える

『関係人口』という言葉、みなさんご存知でしょうか?豊田市では「外から地域を継続的に訪れ、住民と関わりを持つ人材」と定義しています。移住でも観光でもない新しいカタチで地域に関わる人たち、しかしながら山村地域においては実際に関係人口をどのように受け入れれば良いのか、どのように関わってもらえば良いのかイメージしづらいのも事実です。
そこで、3月26日(土)に下山基幹集落センターにおいて地元住民を対象とした『おいでん・さんそんセミナー~ソトのチカラと一緒に地域活性化~』を豊田市企画課とおいでん・さんそんセンターで開催しました。

初めに豊田市役所企画課が、1月に施行された山村条例について説明し、次いでセンターより8年間で山村地域とまち側の交流事業を約300件コーディネートしてきた事例などを紹介したほか、市内山村地域の3団体の代表者にキラリと光る関係人口の取組の事例発表としてご紹介いただきました。当日はあいにくの天気ではありましたが、下山地区の地域づくりに取り組んでいるみなさんを中心に25名の参加があり、関係人口による地域づくりの取組に対する関心の高さが伺えました。

ここからは、事例の発表内容についてご紹介します。

森若蛙(もりわかがえる)の会✖️羽布まちづくり委員会

一番手は、羽布自治区有志により炭焼きを行っている「森若蛙の会」の川合寿佳(かわいひさよし)さんです。山村地域の暮らしと共に培われた炭焼きの技術や伝統を後世に残そうと、2015年に会を設立し、2020年には炭窯も自ら製作しました。

ゼロからのスタートで、基本的な技術習得するうえでかなりの失敗をしてきたこと、炭窯の構造も研究を重ねてきたことなど苦労した経験をお話しいただきました。豊田市のわくわく事業に「里山薪炭塾をやりたい」というテーマで補助申請し、当初より都会の方との炭焼きを通した交流も視野に入れていたそうです。「薪を使って焚き火をしたり、実際に炭を焼いたり使ったり、里山の生活を取り戻すようなことをやっていきたい」と、思いをお話しいただきました。

そして次に、今年1月に同会の協力を得て開催した「炭焼き体験会」について、「羽布まちづくり委員会・景観チーム」の川合晃司(かわいこうじ)さんに紹介いただきました。同チームは、羽布自治区プランに基づいた5年間の計画に位置付けられ、景観を構成する地域の農地や山林を管理して住む人、そしてこちらに訪れてくる人にとって持続的で魅力のある地域にしていきたいと活動を行なっています。炭焼き体験会はその活動の一環で、初めての試みに関わらず参加者が20名以上と反響があったこと、当日は窯からの炭出し、原木の薪割り、窯への薪入れと火入れまで半日ほどで体験でき、参加者の満足度も高かったことなどをお話しいただきました。

今後について、参加者との交流のなかから「火の番をしてみたい」という声もあり、イベントだけではなくて、普段の営みを見ていただくということが大事だという気づきがあったそうです。「まちの人と継続的に取り組める関係性を構築するにはどうしたらいいか、また地域の理解や意識をどうやって醸成していくのか考えていきたい」と話していました。

栃本町 桜の森づくり

『あいち森と緑づくり事業』により整備された地域の山は整備後に地元で管理することが条件となっています。しかしこれまでのように集落単独での管理では、山は元の姿に戻ってしまうことが危惧されました。そこで本藤孝男さん、倉田富夫さん、天野正直さんはまち側の住民に呼びかけ、地域住民と共に花木を植えることで美しい山里を守ろうというアイデアを考えました。

平成30年3月に実施した『第1回桜の植樹祭』には地区外から13家族39名が参加し、みんなでソメイヨシノを植樹、そして、植えた桜には家族の名板を付け『MY桜』として愛着を持って育ててもらえるよう工夫した結果、地域住民と関係人口との交流は大いに盛り上がりました。

その後、草刈り作業や芋掘り体験などにより交流の幅が広がる中で一つの転機が訪れます。まち側の住民からの「マウンテンバイクのコースを作りたい」という要望から栃本町内にマウンテンバイクコースを整備、『おいでんトレイル足助栃本』と命名され、イベント開催時には多くの子どもたちで賑わい、子どもが少ない栃本町に活気を与えています。また、この時は地域の里山を利用するにあたっての協定書をまち側住民と締結し、利用に関する決め事や地域行事への参加など、関係人口との良好な結びつきを持続する工夫を行っています。その後も原木シイタケ栽培体験やクライミングなど、多くの関係人口が栃本町と関わり、地域に活力をもたらしています。

関係人口をお客様扱いせず、常に意思疎通を図り積極的に受け入れることで互恵関係の輪を強固にしていくことが、地域の将来に向けて重要だと結んでいました。


栃本町の桜の森づくりの発表を行った天野さん、倉田さん、本藤さん


栃本町桜の森づくりの発表でのスライド

押井営農組合

代表理事の鈴木辰吉(すずきたつよし)さんよりご紹介いただいたのは、集落を消滅の危機から救う「自給家族」、「源流米ミネアサヒCSAプロジェクト」(※CSAとは:”Community Supported Agriculture” の略で「地域支援型農業」)。森と谷間の僅かな農地しかない人口78人の押井町で、3千年も営まれてきた人々のくらしは、まさに食の自給の歴史です。それが、たった50年の社会環境の変化により消滅に向かおうとしています。農の営みを諦めた時、集落は消滅に向かう。売るための米を作る農業経営は、中山間地域では厳しいけれど、自給の営みなら続けられます。

地域で知恵を絞り、「地域まるっと中間管理方式(※)」で安心・確実に農地を集約化、クラウドファンディングを活用してライスセンター・保冷庫などの設備を拡充し、「つながりによる消費」を指向する家族と長期栽培契約をする「自給家族」は非常に先進的な取組です。また、自給家族の契約者(現在66家族)が地域の住民と自然観察会をしたり、フクロウやミツバチの巣箱を設置するプロジェクトや、集落のお祭りにも参加する様子も紹介され、関係人口との深い関係性が感じられました。

生産者にとっては農の営みと農地を守り、関係人口との交流で地域が活性化でき、消費者にとっては安心で美味しいお米を食べられ、山村との交流で暮らしを豊かにできる。生産者と消費者が直接つながって双方が幸せになるこの「自給家族」の取組は、昨年、農水省の「ディスカバー農村漁村の宝」に選定され、農地の保全のみならず関係人口とのつながりの強化による地域コミュニティの存続に繋げる好例として、今後ますます広がっていくことが期待されます。
 
今回ご発表いただいた事例は関係人口の取組をスタートさせた導入事例としての「森若蛙の会✖️羽布まちづくり委員会」。関係人口のアイデアを積極的に受け入れ、発展的な互恵関係を築いている発展事例「栃本町桜の森づくり」。地域活動や行事に関係人口が地元住民と共に参加し、開かれた自治(オープンコモン)を実践する先進事例「押井営農組合」。それぞれが関係人口との多様な関わりしろを実践例を挙げて発表いただいたことで、参加者もシーン別の関係人口との取組をイメージしやすいものとなりました。
そのためか、事例発表後に実施した事例発表登壇者とのグループトークにおいても、参加者から積極的に質問が投げかけられ、それに対する登壇者の回答に熱心に耳を傾ける光景が見られました。
 
参加者からは「いろいろな地域の取組の発表の中に学び合うものがあり、新たな発想ができる発表であった。またこういった機会があれば、ぜひ参加したい」、「各事例とも特徴があった。関係人口とのルールづくりなどノウハウがわかってとても参考になりました」と感想があり、非常に有意義なセミナーとなりました。今回、ご参加いただいた地域のみなさんが新たに関係人口と共にワクワクする地域づくりを始めるのではないかと運営スタッフとしてとても楽しみにしております。センターとしてもそんなミライの地域づくりをより一層支援していきたいと思います。(坂部友隆、松本真実、川端洸平)


押井営農組合発表のスライド