そこに住んでいなくても地域づくりに関われる!~足助地区と稲武地区のわくわく事業で、地域外の住民が関わる団体が申請

有志団体「Burupon(ブルポン)」のメンバーが立っているのは、今年度本格的に整備していく新盛自治区すげの里周辺の耕作放棄地

「高齢化と人口減少が進んでいます」は、ここ何年も聞き続けているフレーズではないでしょうか。具体的な数字で見てみると、豊田市の山村地域5地区(足助、旭、小原、稲武、下山)の人口は、合併時の26,248人から27.0%減少、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、30.2%から13.7ポイント上昇し、今年5月1日現在、人口19,160人、高齢化率43.9%となっています。(豊田市オープンデータ)
高齢者が増えてくるということは、これまでやってきたことが従来のようにはできなくなってくるということ。

例えば、近年山村地域では、「田んぼが体力不足でこれ以上継続できない」という話がよく聞こえてきます。高齢化、人口減少が進んでも、その地域に住んでいない人たちが継続的に関わり続けることで、地域が維持される。そんな事例が全国で現れ始め、その地域外の人たちが、「関係人口」と呼ばれています。

今回、足助地区と稲武地区の「わくわく事業」では、この関係人口の事例に当てはまる申請がありました。

わくわく事業とは、地域資源(人、歴史、文化など)を活用し、地域課題の解決や地域の活性化に取り組む団体を支援する地域活動支援制度です。これまでは、その地域の住民が団体を組織して補助金申請をしていましたが、この度、足助と稲武で、「地域外の人」が組織した団体、またはメンバーに加わった団体が補助申請をしました。

地域外の住民が、地域に関わり続けることで、地域の維持につながるとはどういうことなのか。この2事例をご紹介することで、みなさんに理解してもらえるのではないかと思います。


わくわく事業の審査会でプレゼンするBrupon

トヨタ労組の農業体験がきっかけで団体立ち上げ

足助地区のわくわく事業に申請したのは、有志団体「Burupon(ブルポン)」です。Buruponは、2021年7月に発足し、現在メンバーは21名。市内製造業の社員とその家族が業務外の活動として、新盛自治区で主に農体験、里山体験をしています。

共同代表の辻竜也(つじたつや)さんは、昨年、同自治区にある豊田市里山くらし体験館「すげの里」周辺の市民農園でトヨタ自動車労働組合が主催する農業体験に参加。豊田市街地に住んでいる辻さんは、7歳と5歳のお子さん、奥様を連れて毎月すげの里に宿泊していたそうです。「宿泊した際、地域の方がブルーベリー摘みをさせてくれるなど親切にしてくれました。高齢化して担い手不足になっている話を伺い、お世話になった新盛に恩返ししたい、自分がやらなければ何も始まらないと感じました」とBurupon立ち上げのきっかけを話します。

その後、就業先で実施されている業務時間外の有志活動をプレゼンするビジネスモデルコンテストに応募。「里山と市内の若い世帯がお互いに助け合い、持続的に豊かに暮らす世界をつくる」というコンセプトに共感した社内、社外の人が少しずつメンバーに加り、現在に至っています。

2022年度は耕作放棄地2,600平方メートルを再生していく予定になっています。将来的にはBuruponFARMとして市民農園を開園し、都市住民が稲作、野菜栽培、動物とのふれあいなどを体験できるようにしていきたいと考えているそうです。


Buruponメンバーのお子さんたちの楽しげな声が響き渡る


田植えは機械と手植え、両方を体験


すげの里のピザ窯を使って焼く昼食用のピザには新盛産直市場の野菜や猪鹿工房山恵のソーセージをトッピングした

地元住民の知恵と経験が引き継がれる

新盛自治区では、定年退職間近の地域住民が2008年に「新盛里山耕流塾」を発足。里山ならではの楽しみや技を体験できる講座、市民農園などを主催し、都市住民と交流しながら、里山や農地の荒廃を解消してきました。年月が過ぎ、主要なメンバーが高齢化して継続が困難になっていたタイミングで、Buruponが立ち上がり、新盛自治区で活動していくことになりました。助けてもらうのではなく、都市住民の心を豊かにする場として、新盛自治区の農地や土地が引き継がれていく。もう無理かと思われていた「地域を守っていくこと」が可能になる好事例が生まれました。

センサー、自動罠装置を開発して獣害対策

稲武地区のわくわく事業に申請したのは、獣害対策・山村部IoT(※1)活用プロジェクト(以下、プロジェクト)のみなさん。メンバーは7名。代表は稲武地区在住のエンジニア、古橋崇史(ふるはしたかし)さんです。古橋さんを含む4名は、稲武で農業を営む「ファームいなぶ営農組合」に所属し、3名は地域外のエンジニアです。

豊田市の鳥獣害の被害金額はここ数年1億円前後にのぼり、深刻な状況です。昨年ファームいなぶで栽培しているトウモロコシのうち2000本が被害を受け、およそ40万円の損失がありました。プロジェクトでは、獣害被害を抑制し、農業をやめてしまう農家を減らすことを目的としています。

現状、獣を捕獲するために各地に罠を仕掛ければ、猟師は捕獲されているか否かに関わらず見回りをしなければなりません。できるだけ安価なセンサーや自動罠装置を開発して普及させ、捕獲情報を猟師のスマートフォンに通知することができれば、見回りの手間が減らせます。しかし、そこに電波がなければ猟師に通知されないため、中継機を何箇所か設置し、確実に情報を届けることも考えています。また、AI(人工知能)を備えれば、動物の特定ができ、例えば国の特別記念物カモシカは罠にかからないようにすることが可能だそうです。この罠のシステムがどこでも使えるよう、ソーラー蓄発電池も開発予定です。


稲武地区わくわく事業のプレゼンをする代表の古橋崇史さん

稲武の課題解決をするエンジニアを増やしたい

このプロジェクトのもう一つの狙いが、稲武に関わるエンジニアを増やすこと。代表の古橋さんは現在、IT(※2)エンジニアとしてリモートで首都圏の仕事を受けていて、「ITエンジニアの仕事はどこにいてもできること」を実感しています。また、古橋さん曰く「ITに限らず、エンジニアは何かを解決したくて仕方のない人たち」。稲武には獣害対策以外にも、ITで解決することができる課題があると感じている古橋さんは、その課題を集約し、日本全国に発信することで、地域課題解決に携わる優秀なエンジニアを増やしていきたいと考えています。

今回のプロジェクトには、実際に3名の地域外エンジニアがメンバーとして関わっていて、何度も稲武に足を運んでいます。

そのうち1名はマイコンと呼ばれる電子部品のプログラム開発を得意とするエンジニア。彼は獣害対策のシステムを作るにあたって、現場のことを知る必要があると、2021年9月に狩猟免許(わな猟、あみ猟、銃猟)を取得したそうです。「日本は食糧自給率を上げていく必要があると感じていました。稲武で、他のエンジニアと協力して農の課題解決のためのものづくりができることをうれしく思っています」と話していました。また、他の2人からは「稲武で活動させてもらえることがありがたい。また地域の人たちの優しさが魅力」、「農家さんたちの笑顔が見たいから頑張ることができます」と、プロジェクトに関わる喜びを聞くことができました。

人口減少・高齢化、獣害。山積みの課題の中には、地域外のエンジニアのアイデアやITで課題解決できることがある。また、エンジニアにとっても自らの技術を活かせるフィールドが得られるなど、この事例も双方にメリットがあることがわかります。

上記のわくわく事業申請団体の事例から、「人口減少、高齢化が進んでも、地域に住んでいない人たちが継続的に関わり続ければ、地域が維持できる」ことの可能性をご理解いただけましたでしょうか?当センターでは、2つの団体がこれからどのような活動を続け、どんな成果を上げていくのか、引き続き注目していきたいと思います。今回ご紹介した「関係人口」の取り組みに興味のある方はぜひ、ご連絡ください。(木浦幸加)