豊森なりわい塾が、10期13年の歴史に幕を下ろす~計237名が地域に学び、これからの生き方・働き方・社会のカタチを考えた

令和3年度第10期 豊森なりわい塾(以下、豊森)が、令和4年5月29日にすべての課程を終了しました。新型コロナウィルス感染拡大防止の社会的要請から令和2年度の開講を断念、令和3年度にようやく開講した第10期でしたが、延期やオンライン補講を経て年度を跨いでの終了となりました。
平成21年に始まった豊森は、これで10期13年の歴史にいったん幕を下ろします。

豊森なりわい塾とは

平成21年にトヨタ自動車(株)の社会貢献事業として始まった豊森は、トヨタ自動車(株)、NPO法人地域の未来・志援センター、豊田市の三者共働の人材育成事業で、平成31年度第9期より(一社)おいでん・さんそんが事務局を担いました。  公募した塾生は、豊田市山村地域をフィールドに、実際に「歩く・見る・聞く」ことを通して地域を知り、地域に学び、これからの生き方・働き方・社会のカタチを共に考え、自分自身の人生を見つめてきました。

「買う」から「つくる」へ 

講座は月に一度、土・日曜日の2日間で行い、年8~10回実施してきました。座学では、世界の歴史・経済構造の課題や、環境・エネルギー・食糧問題などの広い視点と、山村地域で脈々と受け継がれてきた暮らしの知恵や、矢作川流域圏に住む住民としての災害対策などの身近な視点を学びました。
 この座学に加え、地域で出逢った住民の皆さんの生き方や暮らし方を五感で感じるフィールドワークを行うことで、モノも情報も消費するだけが当たり前の現代において、衣食住から地域づくりまで「生きること」を人任せにしすぎていることへ、疑問を抱く人も出てきます。

「暮らしを自分の手に取り戻したい」「何か地域課題に貢献できないか」と感じた塾生の中には、フィールドワークでお世話になった地域に通い、活動を始めた人や、山村地域で起業した人、実際に移住した人、街に住みながらも農的暮らしを始めた人など、塾生同士や地域の皆さんとの関わりの中で、生き方を変化させた人も多くいます。


第10期最終講座

豊森の最終講座は修了レポート発表会です。オブザーバーとして卒塾生、塾生と共に活動する地域の実践者、そして長年豊森を見守り続けた安田副市長がご参加くださいました。第10期生も2日間にわたり、講座を通して感じたことや、自分の足元から行動を変えたいと思ったこと、これからの人生でチャレンジしたいことなどを、パワーポイントやフリップ、紙芝居や弾き語りなど、それぞれの個性が活きる形態で発表。移住先の四国からオンラインで発表した人もいました。

第10期生は、受講中に退職して四国の地域おこし協力隊になった人、塾生同士が夢を共有して、岩村のシェアカフェHyakkeiでワンデーカフェにチャレンジする人、手作りジャムを作ってコラボする人、野遊び塾で自然の中で採取と食の楽しみを発信する人、豊森OBと市民活動グループを立ち上げた人、地域のわくわく事業に名乗りを上げた人など、非常に活発なメンバーでした。地域の方に学ぶこんにゃく作りや、卒塾生に学ぶ茅葺屋根の葺き替え講座など、受講生の自主的な企画も沢山実施されました。

発表中に、一年間の豊森での学びや出逢いへの感謝、情熱や想いが涙と共にあふれてしまう塾生たちもいて、それぞれが一年を大切に過ごしてきたことが感じられました。


紙芝居で修了レポート発表をする第10期生


第10期生が自主企画したこんにゃく作り講座

とよもり食堂の「おむすび」

第5期卒塾生の丹羽仁美さんの修了レポートからはじまった「とよもり食堂」(以下、食堂)。豊森への感謝から、「スタッフへの恩返しとして、そっとサポートできるような昼食を提供したい」と、卒塾生有志で始まった活動です。いつしか、その対象はスタッフから塾生にまで広がり、スタッフ・塾生の毎講座での大きな楽しみとなっていきました。

食堂スタッフは毎回、何週間も前からメニュー会議を重ね、主な食材も、豊森でつながった地域や卒塾生たちが栽培・加工したもので、調理法も素材の味を大切に、きっちりお出汁がとってある、滋味深い豊かな食事を創作してくれました。第9期まではブッフェ形式でしたが、第10期ではコロナ禍でも感染防止対策を徹底し、なんとか食堂を実施できるようにと工夫を凝らし、一皿ずつ美しく盛り付けての提供となりました。

豊森最後の食堂の日は5月29日。この日は奇しくも6年前に食堂が始まった日でした。「おむすび」から始まり、「おむすび」で結びの食卓を準備してくださった食堂スタッフの皆さん、そして6年の間に食堂の「握り手」として携わってくださったスタッフ・食材提供者の皆さんに、この場をお借りして感謝申し上げます。「ご馳走様でした!」。


第5期卒塾生の修了レポートからはじまった「とよもり食堂」で提供される食事

第10期修了式

今期は、足助地区五反田町と下山地区羽布町の皆さんにフィールドワークでお世話になりました。修了式には、五反田自治会長(当時)としてご支援いただいた塚田康弘さんと、明和自治区長の安藤賢治さんがご臨席くださいました。

始めに、渋澤寿一豊森実行委員長が、豊森10期13年にご協力いただいた地域の皆さんと関係各位に謝辞を述べ、これまでの豊森の活動を振り返りつつ、「戦争、食糧危機、エネルギー問題。このとてつもない大転換期を否が応でも生きなくちゃいけない時代だ。今日と同じではないミライで、どんな人たちとどんな生き方をしていくのか。生きることを人任せにしないこと。心の豊かさを真ん中に据えて、これからの社会を勇気をもって、愛をもって、共に考えていってほしい」と挨拶しました。

次に、渋澤実行委員長より、第10期生へ修了証の授与がありました。塾生たちは「豊森には愛しかない」と、地域の皆さんや同期の仲間たち、スタッフへの感謝の言葉を口々に伝え、会場は温かい空気に包まれました。

修了証は旭地区の「つくラッセル」を通して「旭木の駅プロジェクト」に豊田市産の杉板の加工をお願いし、豊田市駅東口まちなか広場「とよしば」で文字をレーザー彫刻したものです。山村とまちをつなぐ豊森らしい修了証は、塾生たちの今後と共に、木材の経年変化を楽しみにしていただきたいと思います。


渋澤寿一実行委員長


豊田市産の杉板にレーザー彫刻した修了証

続いて企画政策部長時代から豊森に参画してくださった太田稔彦市長が「人生は選択の連続だ。オール豊田で応援してきた豊森を受講された皆さんは、ここでの多様な出逢いと学びとが必ず人生の選択に役立っていく。いつか自分の人生を振り返った時に、革新的な選択ができたと思えることだろう。この豊田での1年間を忘れずにいてほしい」と挨拶しました。

長年にわたり豊森の活動にご支援をいただいたトヨタ自動車(株)からはトヨタ産業技術記念館の大洞和彦館長が「フィールドワークはじめ、プライバシーの塊のような聞き書きにご協力いただけたのは、地域の皆さんのご理解とご尽力の賜物と感謝申し上げたい。塾生の皆さんには今後も同期との横のつながりと、OB・OGの卒塾生との縦のつながりで積極的に交流して、これからも豊森の絆と魂とをつないでいって欲しい」と祝辞を贈りました。

事務局の(一社)おいでん・さんそん代表理事の田中茂樹が「コロナ禍で事務局として心折れそうになる場面も多々あったが、塾生の皆さんの学びへの熱意に助けられ、今日の日を迎えることができた。後継事業においても卒塾生の皆さんの御力添えを是非お願いします」と挨拶。その後、全体で記念撮影を行ってお開きとなりました。

ここからが、はじまり。1年間共に学ばせていただいたスタッフ一同、「つながる力でミライを変える」おいでん・さんそんセンターと共に、今後も塾生の皆さんの活動を、心から応援していきます。

豊森の、その先へ

10期13年、地域の皆さんと卒塾生の皆さんに支えていただいた「豊森なりわい塾」は一旦終了いたしますが、事務局では豊森の絆と魂とを受け継ぐ後継事業の検討に入っています。
第1期~第10期までで輩出した卒塾生は237名。同期だけでなく、期を跨いでの卒塾生同士の多様なつながりが生まれていることが、豊森の一番の財産です。そのつながりがより大きく、沢山の方に引き継がれていくようなカタチを作って参ります。それこそが、お世話になった皆さんへの、恩返しになることと心得て。(松本真実)