「はじめよう!半農半Xな暮らし」オンラインセミナー開催〜農業と他の仕事を組み合わせるライフスタイルの実践例から考える生き方

「半農半X」という言葉を聞いたことがありますか?半農半Xとは、農業と他の仕事を組み合わせたライフスタイルのことを表します。塩見直紀さんがこの言葉を提唱されたのが1993年から1994年頃。四半世紀以上経っていますが、2020年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画に半農半Xの文字が盛り込まれる、2021年度には愛知県が「あいちde新日常の選択肢半農半Xな暮らしガイドー買うからつくるへー」のタイトルで冊子とホームページを作成するなど、今改めて注目を集めています。

かつては経済と共に所得が向上し、都市が発展して生活が便利になることが「豊かさ」の象徴でした。お金のために働き、必要なものがあれば、お金で何でも買う。ところが近年、そうした働き方やライフスタイルが問われるような時代になってきました。買うばかりで誰かに自分の暮らしを委ねる生き方でいいのか。こんな疑問を持った人たちが、田畑で自分の手を動かして米や野菜をつくることで充実感を得ながら、別の仕事もして地域や社会とつながる半農半Xという生き方を支持しているのだと思われます。

半農半Xは、個人の生き方の選択肢を広げるだけでなく、農業に携わる人口を増やし、山村地域への移住を増やす可能性も秘めています。そこで、おいでん・さんそんセンターは、半農半Xに興味のある方を対象にオンラインセミナーを開催しました。

実践者に聞く『農ある暮らし️天職・ライフワーク』の魅力

第1回目のオンラインセミナーは、6月10日(金)に、「はじめよう!半農半Xな暮らしDAY1〜実践者に聞く『農ある暮らし️天職・ライフワーク』の魅力」と題して開催しました。

ご講演いただいたのは、半農半Xの提唱者であり、半農半Xに関する著書が台湾、韓国、中国、ベトナムで翻訳・発売されている半農半X研究所の塩見直紀さん、豊田市旭地区で養鶏と神主を組み合わせた半農半Xを実践しているてくてく農園の横江克也さん、豊田市の市街地に住み、平日は会社勤め、週末は足助地区の新盛自治区で、地元住民に教えてもらいながら農業に取り組むの有志団体Burupon(ブルポン)を立ち上げた辻竜也さんの3名です。

塩見さんは、なぜ半農半Xという言葉が生まれたかについて話されました。背景には2つのことがあったそうです。1つは、環境問題への課題意識から農業の大切さに気づいたこと、もう1つは、生きる意味をどう見つけるかという不安でした。当時の塩見さんにとって、農をやりたくても専業農家になるのはハードルが高いものでした。しかし小さく農に携わることをベースにして、他に生きがいを得られることや大好きなことを組み合わせる生き方であれば、敷居が低くなる。こうして半農半Xというコンセプトが生まれたそうです。

また、半農半Xについて書かれた著書の読者には20~40代が多いこと、このライフスタイルを求める方は、梅干しを漬けたり、味噌を作ったり、伝統文化をリスペクトし、小農志向で、発信力も高い傾向にあるので、山村地域の大きな力になると分析されていました。


横江さんは、実践者としての経験を話しました。就職活動中に、懸命に生きた愛犬を亡くし、経済的安定を優先して仕事を探す自分に嫌気がさしたそうです。そこで、命と向き合い、生きる力を身につけることができる農業を志しました。研修などを経て、2011年に旭地区の空き家に移住し、養鶏をメインに野菜栽培、お米づくりを始めました。その後、神社のお祭りで「神主やってみない?」と誘われたことがきっかけで、熱田神宮の養成講座に通い、現在では年間30~40回神主として神事を執り行っています。そもそも農業を始めるにはどうしたらいいか、養鶏と神主でそれぞれどれくらいの収入があるかについても補足して話しました。




辻さんは、足助地区の新盛自治区で週末農業をする団体Buruponについて説明しました。辻さんは、昨年、同自治区にある豊田市里山くらし体験館すげの里周辺の市民農園で、会社の組合が主催する農業体験に参加。毎月、家族ですげの里に宿泊し、地元住民から農の担い手不足についての話を聞くうちに、農を通じてまちと里山をつなぐ有志団体の立ち上げを決めました。

現在22名のメンバーがいて、今年度は2,600平方メートルの耕作放棄地を活用していく予定だといいます。会社員をしながらの活動ということで、週末どのようなタイムスケジュールで時間を作っているかを紹介。また「全てを捧げる必要はないので、やれる範囲で農に携わってみてはいかがでしょうか」と参加者に呼びかけました。

参加者からは、「収入の話が聞けたのは大変参考になった」、「半農半Xの割合は人それぞれということ、半農半Xの全容が短時間で学ぶことができて良かった。実践者のお話が聞けて大変参考になった」などの感想がありました。


安心と農ある暮らしの両立!?企業版半農半X求人


第2回目のオンラインセミナーは、「安心と農ある暮らしの両立!?企業版半農半X求人」と題し、6月23日(木)19時から行いました。

現在、豊田市内で昭和50年からカーボンブラシというモーター用部品の生産を続ける富士産機株式会社(以下、富士産機)は、下山地区で農業を営むKINOファームの協力を得て、週の半分は富士産機、あとの半分はKINOファームで働く「半農半X人材」の募集を行っています。

最初に、富士産機の社長を父に持ち、今回の求人を発案した鈴木聖人さんが、会社の概要と求人に至った経緯を説明しました。現在の従業員は20名。66歳の定年を過ぎても継続して働き続ける人が多い会社だということです。山村地域における耕作放棄地の増加が深刻だと知った鈴木さんは、仕事をすること自体が、社会課題の解決につながる働き方を作りたいと考えました。半農半Xという生き方・働き方があると知り、「小さな規模の会社だからこそチャレンジできる!」と半農半X人材の募集を決めたそうです。

次に、KINOファームの木下貴晴さんは、お米を2.0ヘクタール、野菜を0.5ヘクタールで約60種類、耕作しているということを説明。農業と一口に言っても、米づくりであれば、水路掃除、田植え、水管理、除草、草刈り、獣害対策、稲刈りなどたくさんの工程があり、「体力的に負担を感じる作業もあるが、収穫の喜びが毎年得られる」と話しました。

7月末には、富士産機の会社・工場とKINOファームの田畑が見学でき、半農半Xで働くイメージをよりクリアにしてもらうための現地見学&説明会が実施される予定です。
 
 2回のオンラインセミナーでは、半農半Xは個人の生き方に深みや面白みを加えると同時に、耕作放棄地の増加という社会課題も解決に導く可能性があることを学ぶことができました。セミナーをきっかけに、参加者の皆さんにさまざまな変化が生まれることを期待します。(木浦幸加)