住民自ら作り出す支え合いの拠点「しきしまの家」〜旭地区敷島自治区にある旧杉本保育園を地元住民、学生、企業社員が木質化

8月20日(土)、21日(日)、旭地区の敷島自治区にある旧杉本保育園の3部屋を木質化する改修プロジェクトが行われました。地域住民、敷島自治区と交流のある愛知学泉大学の学生、プロジェクトを支援する(株)三河の山里コミュニティパワー(以下、MYパワー)社員、当センターがつないだリコージャパン(株)豊田営業所と(株)ワイズの社員各日それぞれ1名が、地元大工さんの指導を受け、旭木の駅プロジェクトで地元住民が間伐した木材を薄い板に加工して、壁に貼り付ける作業に汗を流していました。





誰もが自分らしくいられる居場所づくり

敷島自治区は、この整備で「しきしまの家」という居場所づくりを目指しています。地域の子ども、お母さん、高齢者、敷島自治区で活動する森林ボランティア、企業の社員など、誰もが気軽に立ち寄って、お茶を飲みながら会話できるフリースペースや喫茶室、それに加えて「しきしま支え合いシステム」の事務室が設けられる予定です。

「しきしま支え合いシステム」とは、高齢者のみの世帯、一人暮らしの高齢者、子育て世帯など「困っている人」を、同じ自治区に住む元気な高齢者、特別な技能を持つ人、いくつかの仕事を組み合わせて生計を立てる移住者など「お手伝いできる人」が有償ボランティアとして支える仕組み。例えば、一人暮らしの高齢者が自宅の雨樋が詰まって困った時、「しきしまの家」に相談すれば、専門のスタッフが自治区の住民や、縁のある人に繋いでくれるというものです。マッチングを担う事務局運営費は、自治区の住民が各戸の電力契約を地域新電力会社であるMYパワーに切り替えることで出る利益などから賄うことを想定しています。

敷島自治区は、将来への危機感から2010年に自治区の将来ビジョン「しきしまときめきプラン」を策定して以来、5年ごとにその内容を見直してきました。「しきしまときめきプラン2020」の重点プロジェクトとして「支え合い社会創造プロジェクト」があり、「しきしま支え合いシステム」はその中心事業に位置付けられています。

支えられ上手になるための仕組み

なぜ、「しきしまときめきプラン2020」に“住民どうしの支え合い”が定められたのか。プラン策定委員長の鈴木辰吉さんにその経緯を聞いてみました。

「『しきしまときめきプラン2015』の公開討論会の際、旭地区の老人福祉センターぬくもりの里の当時の支所長が、『旭の人は支えられ下手、これからは支えられ上手にならないといけない』と発言されたことが印象に残っていました。その後、民生委員として滋賀県米原市の大野木長寿村まちづくり会社に視察に行きました。地区の住民60名が社員、社員の平均年齢は70歳、食堂の運営や高齢者の暮らしを支援する住民どうしの支え合いを事業として展開していることを知り、目指す姿はこれだ!と思いました」

困りごと、手伝えることの実態調査

「しきしま支え合いシステム」の構築に向けてプロジェクトチームを立ち上げ、2021年1月には、地域課題の解決を事業目的の一つとするMYパワーと連携して、困りごとの実態調査を行ったそうです。中学生以上の住民に「困っていること」「お手伝いできること」を尋ねたところ、8割以上の回答があり、「困りごとに対して、お手伝いできる人がほぼ同数いる」「田畑の管理や草刈り、鳥獣害に困りごとが集中している」ことが判明しました。また、若い子育て世代からの回答には、「子どもの遊び場」「気兼ねなく集える拠点」「喫茶やコインランドリーのあるたまり場」への期待が含まれていました。

この結果を受け、「お年寄りの命とくらしを守るチーム」「草刈りお手伝いチーム」「みんなのたまり場づくりチーム」「町内会への普及チーム」の4チームを編成してプロジェクトを推進。「困りごと・お手伝いできること」の記名式の調査とMYパワーへの電力切り替えによる「しきしま支え合いシステム」の安定的な運営財源を確保するための集落説明会が並行して実施されています。


 移住者受け入れの先にある支え合い社会

敷島自治区の現在の住民数は、330戸974人。敷島自治区は空き家の提供など移住定住に熱心に取り組み、10年間で40世帯、96人の移住者を呼び込んだことが評価され、2020年11月には「令和2年度全国過疎地域自立活性化優良事例表彰」で最高賞である総務大臣賞を受賞しています。今回の「支え合い社会創造プロジェクト」の実現は、その受賞に甘んじない、自治区にとっての新たなチャレンジだと言えます。

「移住者を受け入れ続けても、人口減少は止まりません。人口減少を正面から受け止め、少数社会でも人と人とがつながり、支え合い、ありのままで安心して暮らし続けられる地域経済・自治モデルにしていきたい」と鈴木さん。

自治区長の後藤哲義(ごとうのりよし)さんは、「昨日今日と、作業が進んで形になってきた様子を見て正直ホッとしています。みなさん積極的にやってくださっています。しきしまときめきプランを作るようになって課題がはっきりしたことで『地域のために、地域の人が汗を流す伝統』が徐々にできてきました。高齢化、人口減少でも、『やれない、できない』じゃなく夢を語って実現していく。今ではなく、10年後、20年後の地域を見据えてやっています。苦労は全く感じていません。楽しいです」と話しました。

今後、山村地域で高齢化や人口減少が進み続けた時、「もう自分たちの力ではどうしようもない」と諦めず、自分たちの力だけではどうしようもないからこそ、地域に住む身近な誰かに困りごとを伝え、地域外からの企業、森林ボランティアにも関わってもらいながら暮らしと地域を維持していく。敷島自治区が目指している社会であれば、最期まで充実した人生と、その人生の舞台となる地域の維持が叶えられる、そう感じました。(木浦幸加)