都市部の3つの地域会議が山村地域の取組を見学~山村条例の理念を実現させていくために、市民が当事者として考える

前新盛自治区長の鈴木勝義(かつよし)さんから、足助町新盛自治区の新盛産直市場や森林整備の取組について説明を聞く挙母代表者会議委員の皆さん

都市と山村の交流を普遍的なものにするための条例

豊田市では、令和4年1月1日に『豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例(略称:山村条例)』が施行されました。山村条例は、前文と9つの条文から成っていて、都市と山村の共生のもと、①市全体で共有すべき山村の価値、②持続的な山村地域づくりを実現するための基本方針、③市民を始め各主体の責務・役割等について規定しています。

『都市と山村の共生によって、暮らしの豊かさを創造するまちにしていく』。これは、平成17年の市町村合併の時から豊田市のまちづくりの中心にあるコンセプトで、『おいでん・さんそんビジョン』や『おいでん・さんそんプラン』に基づく取組が進められてきました。合併から17年が経ち、山村地域への移住定住や都市と山村の交流などが進んできた流れを普遍的なものにしていくため、市民の皆さんとの議論を重ねて条例制定が実現しました。

地域会議への諮問答申

「諮問」とは、市長が市の重要施策等について、地域からの意見を求めることを言い、その諮問に答えることを「答申」と言います。

地域会議は、地域の住民の多様な意見の集約と調整を行い、共働によるまちづくりを推進することを目的に設置されており、市からの諮問に対する答申や課題解決のための市への提言を行う審議機関としての役割を担っています。

今回、この山村条例に関して、都市部の地域会議(挙母代表者、末野原、美里)と山村地域の地域会議(稲武、小原地域、下山)に諮問答申がされることになりました。

内容は、都市部の地域会議には、都市と山村地域の交流や連携を深める機会を増やすために、地域で実践可能な取組やそのために必要な方策等を諮問し、山村地域の地域会議では、地域として何をしていく必要があるのか、そのための課題や具体的な取組について諮問しました。

都市部の3つの地域会議委員が山村を見学

都市部の3つの地域会議(挙母代表者、末野原、美里)には、山村地域に対する理解を深めたうえで答申内容を検討いただくため、9月11日(日)に挙母代表者会議、9月17日(土)に末野原地域会議、9月25日(日)に美里地域会議という日程で、山村地域現地見学会が実施されました。

全日程において、足助地区(新盛)の取組と、旭地区(つくラッセル)のIターン者の活動等を紹介しました。

新盛地区では、前新盛自治区長の鈴木勝義(すずきかつよし)さんより、「新盛産直市場」やわくわく事業で森林を整備する「しんもり花の郷」について説明がありました。また、一風変わった取組として、農地活用と地域活性化につなげるために、試行錯誤を重ねて栽培する「ウコギ」の紹介と、それから抽出した「ウコギ茶」の試飲も行われました。


新盛自治区で栽培されるウコギに興味を示す美里地域会議委員

獣肉加工施設の「株式会社山恵」では、猪や鹿などによる農作物等の被害状況や、ジビエ(狩猟で捕獲した野生鳥獣の肉や料理)として加工および販売する施設案内とその仕組みの紹介がありました。また、副産物として出る皮や角を活用したアクセサリー製作等を行う「三州しし森社中」を見学しました。


獣肉加工施設『山恵』の説明に耳を傾ける挙母代表者会議委員

委員の方からは、「私有地の山を伐採して散策路として整備することで景観が良くなっており、素晴らしい」、「ジビエはおいしさがわかれば流通が増えるのではないか」といった感想や質問が相次ぎました。

「つくラッセル」では、株式会社M-easyの戸田友介(とだゆうすけ)さんより、これまでの経緯や幾多の取組、つくラッセルの施設について紹介がありました。

戸田さん自身が、大学在学中に株式会社を立ち上げ、豊田市の過疎対策プロジェクトを受託したことをきっかけに旭地区にIターンすることになったこと、田舎を目指す若者は、何でもお金に頼る生活に不安を抱え、人生に主体的に関わることを大切にしたいという思いをもって田舎暮らしを目指していること、移住者を受け入れていこうという活動もしており、敷島小学校の生徒数が平成29年から増加に転じ、複式学級にならずに済んでいることなどについての話がありました。


旭地区のつくラッセルで戸田友介さんの話を聞く末野原地域会議委員

委員の方からは、「この地に住みたいと思った理由や決め手は何ですか」、「移住者の子供たちはそのままこの地域に居着くでしょうか」といった、戸田さんや移住者の方の価値観に関する質問が多くありました。

その後、各地域(稲武、小原、下山)に移動し、山村地域の地域会議委員との意見交換会が実施されました。

都市と山村の委員が意見交換

挙母代表者会議と稲武地域会議の意見交換会は、稲武商工会館で行われました。稲武の地域会議委員からは、稲武地区で行われている地域型ワーキングスペースの紹介、近所との関わり合い、自然の豊かさといった地域の魅力と、大学進学時に転出してしまう課題の情報提供があり、挙母代表者会議からは、人口減少に対する事業を地域課題解決事業でやるのも良いのではと提案などがありました。

下山交流館で行われた意見交換会では、下山地域会議と末野原地域会議の委員が3グループに分かれて情報交換が行われました。人口が多いことでのゴミや収集マナーといった課題、耕作放棄地の担い手の問題など、地区それぞれの課題があげられた後、エコットで行っている段ボールコンポストで作った肥料を下山の人に使ってもらい、育てた農産物を下山から買うといった案や、子どもたちが夏は下山の学校に通うなどといった、課題解決につながる新たな交流のアイデアが挙げられていました。

小原交流館で行われた意見交換会では、小原地域会議と美里地域会議の委員が4グループに分かれて情報交換しました。人口に違いはあるが、両方で自治区役員の担い手がいないことが共通の話題として挙がりました。また、小原地域会議は、最近、20~40代の若い世代にヒアリングを始めたと話しがありました。最後に、せっかくつながる機会を持ったので、今後相互に交流する機会を持ちましょうと提案がありました。


稲武商工会館での意見交換会

今回、山村地域現地見学会に参加した3つの地域会議は、今後答申に進んでいきます。委員の皆さんが、見学会と情報交換会で得られた情報を基に、どんな内容を答申されるのか期待されます。

今回の山村地域現地見学会では、豊田市は改めて広い市だということを再確認しました。今更ながら「山村地域を知らなかった」方が多いことに驚きましたが、情報交換の後には課題解決のためのアイデアがいくつも提案されたのが印象的でした。コミュニティの在り方も生活スタイルも違う地域だからこそ、互いの強みを生かすつながり方ができます。センターでも直に足を運ぶ機会を創出したいと思います。