『つながる力で変わる“じぶんごとのミライ”』を考える〜第10回いなかとまちのくるま座ミーティング、3年ぶりの対面開催

2月11日㈯に「いなかとまちのくるま座ミーティング」を小原交流館で開催しました。おいでん・さんそんセンターでは、都市と山村の交流促進に向けて、市内外の取組事例やノウハウについて参加者同士が情報共有を図るとともに、同じ課題に取り組む関係者とのネットワークを構築し、互いの今後の取組に生かすことを目的に毎年開催しています。

当日は総勢57名の方が集まりました。過去2年がオンライン開催ということもあり、参加者はじめスタッフも久しぶりの対面開催で同じ空間を共にする「つながり」を肌で感じていました。
今回のテーマは「つながる力で変わる『じぶんごと』のミライ」。山村地域は急激な人口減少により、従来の「住民自治」頼みでは維持が難しくなっています。都市部の方たちが地域に関わり、課題解決に取り組む「関係自治」こそが、これからの持続可能な地域の姿と考えています。これはどの地域でも言えること、つまり誰にとっても「じぶんごと」のテーマです。

山村地域の活動者トークセッション

第1部では豊田市の山村地域をフィールドに「関係自治」を広げる活動をされている4名のパネリストが事例を紹介しました。


いなかとまちをつなぐ活動をするパネリストが、事例発表。左から、コーディネーター洲崎さん、Burupon・辻さん、Kinoファーム・木下さん、三河里旅・鈴木さん、北小田の家・荒川さん

市街地の住民が田舎の課題を「じぶんごと」に

最初に話をしたのは、里山とまちをつなぐ有志団体「Burupon(ブルポン)」の活動をしている辻竜也(つじたつや)さんです。県外出身で市街地在住。しかも、もともと豊田市に愛着を持てなかった辻さんが、農業体験で通った足助地区を第2の故郷と感じ、地域課題解決のためBuruponを立ち上げた経緯を話しました。

辻さんは、愛知県に住む、農体験・里山体験に興味がある約200名を対象にアンケートを実施したところ、約7割の方が里山体験をしたことがなく、そのうちの多くから「きっかけがあれば参加したい」という回答があったそうです。まち側の住民が気軽に山村に足を運べるように農体験を企画・実施しています。2024年には農を通じてまちと里山をつなぐ「Burupon FARM」の開園も計画されているそうです。

 課題解決のキーワードは『つながり』

次に話されたのは、下山地区のKinoファーム木下貴晴(きのしたたかはる)さんです。下山出身で2018年に農家としてスタートした木下さんは、「中山間地農業は後継者がほとんどいなくて深刻な状況」と語りました。
その中で、豊田市街地の会社が始めた『半農半製造業』な働き方を受け入れたり、都会の消費者と直接契約して農地の耕作を維持する「自給家族」を始めたり、様々な挑戦をしています。関係人口を受け入れる側として、「Kinoファームが『つながり』の中心になれたら」と話されました。

ニッチでローカルな地域限定旅行でつながる

次に登場したのは、小原地区の広告デザイナーであり、地域限定観光業「三河里旅」を営む鈴木孝典(すずきたかのり)さん。地元の元気のなさが気になったことから、地域の良さを見つめ直して知ってもらうための地域限定観光業を始めました。

地域に足を運んでもらうことでファンができ、地域への経済循環など波及効果が大きいそうです。実際に実施された企画ツアーも紹介され、どれも興味深いものばかりでした。「知らないだけで、掘り下げればどの地域でも面白くなるので、いろいろな場所で応用してもらえれば」と話されました。
 

ふるさとを自分で選ぶ時代

最後に登場したのは、足助地区北小田町で歴史ある古民家をリノベーションし、レンタルスペース・民泊『北小田の家』を運営する荒川偉洋子(あらかわいよこ)さんです。田舎暮らしワークショップの先生は地元住民の方々。関係性を大切にする参加者の様子を見ていると「故郷は自分で選ぶ時代が来たのではないか」と感じるそうです。今後も映画の上映会などを企画して、様々なコミュニティの場になっていければと話されました。

第2部くるま座ぷらっとミーティング

豊田市山村地域は、人口減少・高齢化に直面しています。これは山村の課題のみならず、今後都市部でもますます進行していくことが明らかです。
今年度、おいでん・さんそんセンターでは「人と地域の学びの循環プロジェクト」、「地域経済循環プロジェクト」、「自治研究プロジェクト」の3つのチームを作り、人口減少・高齢化社会で生まれる課題にどのように対応していくか、研究を進め、学んできました。第2部の前半では各プロジェクトごとにテーマを掲げて参加者は興味のあるテーマの部屋へ20~30名ごとに分かれました。

人と地域の学びの循環プロジェクト
㈱M-easyの戸田友介さんは、「地域で働き多くの時間を地域の人と共にしていると、課題が課題になる前に解決するコミュニケーションができてくる。テーマ「地域ではたらくに向き合うについて深めたい」と語りました。その後の座談会では、戸田さんが「お金との向き合い方は、先に「稼ぎ」ではない。関係性の中で役割を担い、いずれお金が発生して仕事になっていくこともある。田舎ではお金が万能ではない」と話をしました。

地域経済循環プロジェクト
㈱ピー・エス・サポートの村田元夫さんは、「豊田市のある山村地域の事例では年間消費額の7割、1.4億円が地域外に流出している。その内の1%でも地域内で消費できれば、多くの移住者家計を養える計算になる。「地域でお金を循環させるには」をテーマに、地域資源を使ったビジネスのアイデア出しをしましょう」と語りました。座談会では、地域エネルギー、観光、ケア・教育についてグループに分かれて話をし、それぞれが地域でお金を循環させるためのアイデアを話し合いました。村田さんは、「覚悟を決めて物事を進める人の存在が大切だということが明らかになった」と話をしました。


『地域経済循環プロジェクト』のくるま座談義の様子

自治研究プロジェクト
名古屋大学大学院教授の高野雅夫さんは、「空き家の活用方法は確立してきたが、農地・山林も含めた3点セットで活用していかなければ里山再生はできない。都会の人が心身の回復に使う活用方法もある。「家・農地・山林の引継ぎ方と自治力とは」について語り合いたい」と話をしました。座談会では、今後の農地の活用が課題という話題が上がり、高野さんは、「担い手の減少がさらに進む。今後は、集落営農やグループ農業などのみんなでやる農業、新規に自給のためにやりたい個人の農業の2パターンが増えていくと予想される。農業をやりたい人と地域をつなぐ相談先が必要。農業機械を共同で使える仕組みがあると良い、などの意見が出た」と話しました。


『自治研究プロジェクト』のくるま座談義では、農業機械の維持管理が話題に上がった

各グループの話し合いから、「つながる力」が課題になることを未然に防いだり、今後、課題を解決するために求められていることが共通して挙がっていました。
参加者からも「参加者同士で話をすることを通して、問題解決への道を開いていくという体験ができた」という感想が寄せられました。コーディネーターの鈴木雄也さんは、少し前に都会から旭地区にUターンした経験をもとに、「都会では個人の悩みは個人のもの。田舎では個人の悩みをみんなの悩みとして考えるのが、面白いし助かる」と話しました。
 私たちは、関係性の中で生きています。困ったことがあれば相談できること、お互いに心を寄せ合うことなど、『未来を変えていくために日々の生活の中でできることがある』と、改めて感じる一日となりました。(小黒敦子)


左端・田中センター長、左から4番目から順にくるま座談義を進行した高野さん、戸田さん、村田さん、右端・まとめの全体会進行の鈴木さん