地域を未来へつなぐ 人材育成事業~豊森なりわい塾と ミライの職業訓練校が 生み出した人材って?

山村地域が持続していくためには、その価値を、自分の人生に重ね合わせて考えることのできる人材が必要です。その人材が育ったとき、ある人は、山村地域で自治を進めるリーダーとなり、ある人は、都会にいながら山村の価値を暮らしに取り入れた人生を送ることになるのではないか。
そう考え、おいでん・さんそんセンターは、ミライの種まきとして人材育成事業に力を入れています。今回ご紹介する「豊森なりわい塾」、「ミライの職業訓練校」は、豊田市内だけではなく、周辺市町村の山村地域へも影響を与えている学びの場です。

豊森なりわい塾

豊森なりわい塾はトヨタ自動車、NPO法人地域の未来・志援センター、豊田市の3者による共働の人材育成事業で8期10年の実績があり、9期目になる今年度より(一社)おいでん・さんそんが事務局として加わりました。豊田市の山村地域をフィールドに、地域を知り地域に学ぶことで、暮らしの足元を見つめ、「人と人」、「人と自然」そして世代を結び、持続可能な社会を作る考え方を共に学びます。

多様に活躍する卒塾生

約200名の卒塾生の中には、起業した方、山村地域に移住した方、まちから通って森林ボランティアや農的な暮らしに携わっている方、まちで山村地域との交流を生み出している方などがいます。
豊森は関係人口やSDGs(※)などの言葉ができる前から、地球規模のマクロな視点と、地域や個人の生き方というミクロの視点で、まちとむらをつなぎ、課題を見つけ行動する仲間作りをしてきました。
(※)持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標。

地域に根を下ろし 仕事で貢献する浅野夫妻

5期生の浅野陽介(あさのようすけ)さんは、名古屋市での暮らしに生きづらさを感じ、豊森なりわい塾の受講を決めました。
「お金では測れない価値」があることに気が付き受講中に旭地区に単身で移住。合同会社 アサノエンタープライズを起こし、「We Love ASAHI」Tシャツの企
画販売、イベントでの音響オペレーターなど多様な仕事をして地域を盛り上げています。
9期生の浅野恵美子(あさのえみこ)さんは、陽介さんとの結婚を機に豊橋市から旭地区に移住。現在、豊森で地域のことを学びながら、足助地区新盛町のデイサービス型地域活動支援センター畦道に勤務し、地域の精神障がい者やそのご家族のサポートに従事しています。


5期生の浅野陽介(右)さんと9期生の恵美子さん(左)の結婚披露パーティは地域の方に祝われつくラッセル(旧築羽小学校を再活用した地域を担う人材創造拠点)で開催された

受講が決め手となり 来春、稲武地区へ移住 

9期生の大山眞記子さんは豊田市に住んで10年、自然に親しんで育ったご自身の経験から、親子で「森のようちえん」に参加しました。自然の中でのびのびと過ごすお子さんの姿を見て山村地域への移住に関心を持ち、夫の泰介さんとご夫妻で豊森を受講することを決めました。
 造園業を営む泰介さんは講座で「半農半X」という生き方を知り、自給農をしながら地域の中で「くらし・かせぎ・つとめ」のバランスを取りつつ自然を通じたつながりを築きたいと思うようになります。似顔絵を描くことをなりわいとする眞記子さんも、地域から学ぶ中で自分にできることは無数にあると 気づき、他のなりわいも積極的にやっていきたいと考えるようになったといいます。
「豊森で『人生の本質は自然と共にある』ことを夫婦で共有でき、進む方向を決定づける後押しになった」と、来春に稲武地区大野瀬町への移住を決めました。
豊森で育まれる価値観や繋がりが、行動を変え、地域を変えていく。これからもそんな景色が広がっていくよう、事務局としても尽力していきたいと思います。


稲武地区へ移住予定の大山夫妻と娘さんたち

ミライの職業訓練校

ミライの職業訓練校は、職業技能習得の場ではなく、卒業しても就職ができるわけではありません。受講生は、山村をフィールドに活躍している先輩たちの暮らしや仕事ぶりを訪ね、自分自身のモヤモヤを深め、自分がやりたいことを見つけ、仲間と共に学び合いながら「天職」を探します。
唯一のルールは、自分も相手も否定しないこと。世話人と呼ばれるスタッフも共に学び合う仲間の一人として伴走します。  今年で5期目になりますが、受講の前後の暮らしぶりに変化があった方を2名紹介します。

設楽町津具へ移住した 2期生篠崎郁恵(しのざきいくえ)さん

受講当時は、独身で公立小学校教諭。受講のきっかけは、TEDxNagoyaU(※)で高野校長のプレゼンテーション『田舎がとんでもなくクリエイティブ』を聞いた事。以前から都会の暮らしや、教師という仕事についてモヤモヤしていたが、何をしていいのか分からなかったそうです。 「それならば何でもやってみよう!」と心に決め、ファシリテーション基礎講座を主催するなど様々な事にチャレンジしてみると人生が転がりだしたそうです。
当時交際相手だった篠崎大地さん(3期生)と結婚され、今年4月に設楽町津具地区へ夫婦で移住し、現在は自宅で家庭教師や英会話教室を開いています。  信頼できる安心・安全な関係(共生)なら、モヤモヤを互いに語り、響き合い(響生)、化学反応し、より良い方向に行くのではないか。理想とする働き方、「自己表現をして人に喜んでもらうこと」に向かって日々、邁進中だそうです。
(※)TEDとは1984年に設立された、世界的なプレゼンテーションの協議会。TED Talk に感銘を受けたメンバーが TEDx イベントを名古屋大学で開催しようという意気込みの
もと、 2013年度に発足。 実行委員会は名古屋大学の学生を中心とした名古屋近辺の学生で構成されている。

旭地区で地域課題解決に取り組む 3期生野田侑希(のだゆうき)さん

都会でやりたいことはほとんどやりつくしたという野田さんは、自分のことを欲深い人間と 表現していました。
「理想が高いのに意思が弱い」、「稼いだお金をストレス発散のために使う」など彼女にとっての悪い習慣を、田舎に行ったらやめられるかもしれないという仮説を立てました。
「農業がしたいわけではない、でも農的な暮らしはしたい」と、移住を決意。現在はつくラッセル(旧築羽小学校を再活用した地域を担う人材創造拠点)を舞台に山里の暮らしの知恵を伝承する「山里手習い塾」を主催しています。
他にも活動グループ「竹々木々」でメンマプロジェクトや、竹林整備をしています。また、木の駅プロジェクトで薪づくりをしたり、新聞配達もしたりと、地域の課題解決をなりわいにしていると言っても過言でない暮らしをしています。
今年度は、都市部からの参加に加えて地元の高校生も参加しています。今後も、若い方たちの参加を期待しています。
(豊森なりわい塾 松本真実 )
(ミライの職業訓練校   西田又紀二)


今期ミライの職業訓練校では、移住者を訪ね話を聞いた


受講生は、移住者の話をヒントにして自らのモヤモヤを深める