「私が『ひとなる』ために~グローバルとローカルを結ぶグローカル人材の育成~」を考えるー令和元年度いなかとまちのくるま座ミーティング開催

毎年、おいでん・さんそんセンターが進むべき方向について市民の皆さんと語り合う「いなかとまちのくるま座ミーティング」。今回、2月1日(土)に、豊田商工会議所で開催するにあたり、全体のテーマを「私が『ひとなる』ために」に決めました。
ひとなるとは、「成長すること」という意味。地域 の持続のカギを握る「人の成長」について考える時間を、参加していただいた 97 名の方と 持ちました。

100年後の社会を想像できるか

「100 年後も地域が続いていくために、どんな人材が必要だと思いますか?」読者の皆さんな らどう答えるでしょうか。この問いを投げかけたのは、基調講演講師の大野佳佑さん。島根県立隠岐島前高校の教育魅力化プロジェクトのコーディネーターです。

20 年前にインターネットが、10 年前に SNS やスマートフォンが普及し始め、私たちの生 活は激変したと言っても過言ではありません。その事実を念頭に置くと、100 年後、2120 年の社会は『今の世界とは全く異なる』としか言えないのではないかと大野さんは指摘しました。
そんな未知の社会を生き抜いていく子どもたちが身に付けるべきなのは「主体的に課題を見つけ、多様 な人と共働しながら答えのない課題に粘り強く向かっていける力」だと言います。

 10 年前、生徒数の減少により廃校の危機を迎えていた島根県立隠岐島前高校。島前 3 町村 が協議した結果生まれたのがこれからの社会を生き抜く力を育む「高校魅力化プロジェクト」。島の子どもだけでなく、日本各地やトルコ、ロシアなどからの島留学生も一緒になって学んでいます。
特徴的なのは生徒が海外に飛び出す機会を持っていること。例えばシンガポールでの課題研究発表では英語のプレゼンテーションが求められます。生徒たちは例え完璧な英語ではなかったとしても自信を持って臨むことができる。それは「島前地域に顔が見える関係のなかで育まれる温かさがあるから」と大野さん。

幸福度の比較研究をするためブータンに行ったある生徒は、現地の伝統文化に触れ、自分の地元にも大切にすべき伝統文化があることに気が付いたそう。
ローカルとグローカルの往来で、どちらも同じように素晴らしさがあり、課題を持っていることを体感として知る『グローカル人材』の育成に力を入れています。


大野さんは、終始笑顔で参加者に語りかけていた

目の前の課題を見つける

地域や学校での学びについては、生徒たちに「自分の半径 10メートル以内の課題に取り組むことが大切だよ」と伝えた後、教員は遠巻きに見守ることを大事にしています。
『気づく→考える→話し合う→実践する・巻き込む→振り返る→気づく』の循環を何順も経験し、実際にコミュニティが変わっていくことを目の当たりにすることで、答えのない課題に粘り強く向かっていける力を育んでいます。

めげずに挑戦し続けること

大野さんは、基調講演の最後に「高校魅力化プロジェクトではうまくいかないこともたくさんある。失敗してもめげずに支え合って挑戦を続けることが地域も人も『ひとなる』につながる」と話し、いなかとまちのある豊田市はグローカル人材が育つ土地柄なので期待していると励ましてくださいました。


続いて、豊田市内外の山村地域をフィールドとした地域づくり・人づくりの先進的な事例について5 名のパネリストが紹介しました。コーディネーターは、豊森なりわい塾の塾長、澁澤寿一さんです。

津具に移住し学び場づくり

最初に登壇したのは篠崎郁恵さん。おいでん・さんそんセンターの人材育成事業「豊森なりわい塾」、「ミライの職業訓練校」の両方に参加し、2019年 4 月から愛知県設楽町津具へ夫婦で移住しています。
受講から移住まで、どんな心境の変化があったか、また現在自宅で開いている家庭教師や英会話教室について、今後は「多様な人たちのいる環境に子どもたちを置くことを目指してやっている」と話しました。

旭地区で林育を進める

次に登壇したのは、旭地区の子どもたちに林育を行う「あさひ根っこの会」高山治朗さん。旭中学生対象のあるアンケート結果で、「旭地区にこれから必要だと思うこと」の答えに「間伐」と記入した生徒がいたことを知り、取り組んできた甲斐があったと感じる一方、今ま さに間伐を担う方たちが高齢化でやれなくなっている現状を危惧していると話しました。


パネルトークの様子 高山治朗さんの発表

親どうしのつながりをつくる

センターの次世代育成部会で講師を務める鈴木佳代さん。都市部に比べ人口が少なく、子育て仲間の作りにくい山村地域で、これまで行ってきた「子育て耕縁会」のように、子どもやパートナーとの関わり方について学べて、知り合いづくりができるイベントを継続することは大事な使命だと強調しました。

人生を見つめなおす ミライの職業訓練校 

旭地区に移住して10 年。新聞配達やデイサービスなどを手掛ける会社を運営する戸田友介さんは、ミライの職業訓練校の世話人として登壇しました。ミライの職業訓練校は、「否定しない」、「結論を出さない」、「モヤモヤをスルーせずに育てる」講座を開催しています。
受講生同士が情報共有しながら回を重ねることで、転職したり、移住したり、大きな変化 が訪れる人もいるということを紹介しました。


パネルトークの様子 戸田友介さんの発表


くるま座トークでは、輪になってそれぞれの想いを語り合う

農を軸にして支え合う

センター長の鈴木辰吉は、地元の押井営農組合代表として「源流米ミネアサヒCSA(※) の取組について説明しました。 人口減少が進み田んぼの維持管理が難しくなってきた地元と、安全で美味しいお米を求め、田舎とのつながりを持ちたい契約者が「自給家族」になって支え合う仕組みです。
「山村地域の人は誰かに頼るのが下手なことがある。頼ってもいい、支え合ってもいいという意識が広がることが 大切」と話しました。


大野さんは6つのくるま座を回り、話題に入っていた

相手を否定しない道を探る

休憩をはさみ、くるま座談義が始まりました。参加者は話を聞いて興味のあるパネリストを囲み、もっと聞きたいこと、自分が取り組んでいることについて話をしました。
くるま座談義を聞いていた大野さん。篠崎さんグループの話題に言及しました。

「篠崎さんは津具に学校では教えてもらえないようなことが学べる場を作りたいが、地域のニーズは少し違うということがわかった。そこで、自分の想いと違うからと否定するのではなく、相手のことも肯定することで自分のやりたいことを叶えていく道を模索するのが良いのでは」とコメントし、多くの参加者が大きく頷いていました。

今回のくるま座談義では、大人も子どもも「ひとなる」ためにどうしていけば良いかについて皆さんと考えることができました。大野さんのおっしゃったように、まずは大人である私たちスタッフが、主体的に課題を見つけ、多様な人々と共働しながら答えのない課題に粘り強く向かっていく姿勢でいようと思います。
(木浦幸加)


くるま座トークには、海士町から大野さんと同行された海士町教育委員会 小・中学校教育コーディネーター浅井恵美さん(中央)も参加した