小原地区・岩下町での集落応援隊活動〜今だから注目したい、8年続く人と人とのつながり
コロナ禍で人との接触や外出が制限される状況が続いています。このような時だからこそ誰かのために行動し、そのことで得られる喜びが、かけがえのないものだとわかるのではないでしょうか。そんな人と人のつながりが生まれる、おいでん・さんそんセンター主催「集落活動応援隊」の取組を紹介します。
集落とボランティアをマッチング
この事業では、小規模化や高齢化が進み、住民だけでの共同作業が困難となった集落と、集落の人たちと交流しながら地域活動を応援するボランティアをマッチングしています。 年間6集落8回ほどの集落活動に応援隊を派遣。現在25名のボランティア登録があり、集落の要請に応じ毎回5名ほどの隊員が有志で参加しています。
住民の合意で受入を決めた岩下町
小原地区・岩下町での活動は、2013年のセンター設立当初にこの事業の第一号としてスタートしました。岩下町が応援隊の受入れを決めたのは、2012年に住民が地域の将来について考える「集落ビジョン」のワークショップがきっかけでした。当時、町内の世帯数は10戸、高齢化率75%ほどで、担い手不足が喫緊の課題でした。
そこで集落の課題と現状を整理し、今後取り組む内容を住民同士で話し合ったところ、都市部市民と協同で地域の景観保全を行なっていくことが合意されました。
以来、岩下町では毎年6月と9月の環境美化活動を集落応援隊の力を借りて実施しています。活動の休憩時間や作業後は隊員の方と積極的な交流があり、時には日頃の感謝を込めて集落のお母さん方が手料理を振舞ってくれることもあります。
コロナ禍でも途切れない関係性
今年度に入り、新型コロナウイルスの影響で、人と人とが接触したり、集まることを避けなければならない事態が広がりました。センターとしては、集落活動応援隊の活動を、新型コロナウイルス感染症に配慮しながら引き続き実施することを決めたものの、集落側からの応援要請があるか、また隊員側から参加申込みがあるか不安を抱えながらの取組でした。
しかし毎回杞憂に終わり、両者から例年以上に積極的な申込みをいただいています。岩下町からも要請を受け、実施が決まりました。
回数を重ね 余裕のある環境美化
9月19日(土)の活動は、住民9名と応援隊7名が参加し行ないました。草刈りをしたのは集落内の市道で延長700m、高低差60mの路側や法面の草刈り作業。参加した隊員には岩下町ファンの常連者も多く、慣れた様子で持ち場に分かれ手際よく作業が進み、1時間足らずで刈り終えました。
刈った草は集めて軽トラに積み、毎回きれいに片づけられ、住民の環境に対する美意識の高さを感じます。当初は手入れが行き届いておらず刈り終えるまでで精いっぱいでしたが、年2回の環境美化をきっちり行っている効果で、草の勢いも抑えられ、現在では予定時間内に余裕をもって終えることができています。
隊員、受入集落 それぞれの想い
貴重な時間をボランティアに充てている方たちの心境はどんなものなのか。隊員にお話を聞くことができました。
今年で4年目となる松井博行さん(58歳・志賀町)は、参加の理由について、「いろんな地域の方と接したくて最初は試しで参加してたんですがやみつきになってしまいました。毎回地元の方といろんなお話しができて、元気な顔を見られることが楽しみです」と、住民と交流できることが参加の原動力になっていることを教えてくれました。
8年目の綾野忠司さん(65歳・大林町)は、「コロナ禍の状況ですが密になる活動ではないですしね。気分転換や健康維持になるので都合が合うときは参加しています」と、活動への参加動機を話します。
一方、応援隊を受け入れる岩下町・町内会長の久名木良夫さん(70歳)は、「今年応援隊の方が来ていただけなければ活動を中止しようと思っていました」と、応援隊を頼りにする思いを語っていました。また、草刈作業を終えると「みんな年寄りばかりでやれる人が少なくなってきているで、本当にありがたいです」と、明るい笑顔で挨拶されました。
岩下町の現在の世帯数は9戸。徐々に少なくなっていますが、住民から地域を諦める声は全く聞こえません。いつまでも地域が守られていくよう、これからも応援を続けていきたいと思います。(坂部友隆)