猪がつないだ縁から生まれた 鹿肉欧風カレーを新発売!〜足助高校の生徒がPRを学んで参画

「シカしか勝たん」とは

突然ですが、上の写真をご覧ください。まず目に飛び込んでくる「シカしか勝たん」というキャッチコピー、どういう意味?と思われる方が多いのではないでしょうか。「〜しか勝たん」は、「~」に入る対象を全肯定する言葉。特に10代の若者がSNSで使用しており、「〜」には好きなアイドルの名前や、食べものをあてはめることが多く、『〜が最高』、『〜に勝てるものはない』という意味があります。足助高校の観光ビジネス類型2年生の生徒が授業の中で考えてくれました。

きっかけは山村での農業を通じた社員研修

「鹿肉欧風カレー」は、「とよた里山ジビエカレー」シリーズの第三弾商品です。
県内でカレーハウスCoCo壱番屋をフランチャイズ経営する(株)ワイズの農業を通じた社員研修が2015年から旭地区・伊熊町でスタートし、獣害被害を目の当たりにしたのがきっかけです。
自社として商品開発、地域貢献できることはないか考えた結果、地元の獣肉加工会社山恵、愛知県立足助高校と三者連携で2017年7月に「猪肉キーマカレー」、2018年6月に「猪肉和風カレー」の商品を生み出しました。
 
その際、高校生が商品キャラクターの考案やイベントでの販売促進に関わったことで話題化が図られ、3万食近く売れるヒット商品となりました。おいでん・さんそんセンターのマッチングで、元々関係がなかった三者がつながり、新しい価値や経済循環を生み出しました。

社会課題の解決に貢献する先進事例として、2018年11月に内閣官房・農水省による第5回「ディスカバー農山漁村の宝」で1000件を超える応募のなかから32団体の一つに選定され、首相官邸で受賞し、総理大臣から激励を受けた取組でもあります。


家畜伝染病CSF(豚熱)の影響

順調と思われた猪肉カレー商品販売でしたが、2019年に県内で深刻な被害をもたらした家畜伝染病CSF(豚熱)感染の影響で、山恵での猪肉の処理ができなくなったことを受け生産がストップしました。山恵は、年間500頭ほど加工・流通していた猪肉が70頭ほどと激減し、在庫も底をつき、経営に大打撃を受けています。
今年度から猪に次いで農作物被害が多い鹿に切替え力を入れてきましたが、コロナ禍による飲食店からの需要減や夏期の長雨による捕獲困難などで苦境に追い込まれています。
 

鹿肉カレーの開発 

そのことを知った(株)ワイズの山本庸司(やまもとようじ)社長は、
「猪肉カレーではとてもお世話になった。何かできないかと思っていたところ社内で鹿肉カレーの企画が持ち上がった。使う鹿肉は微々たるものだが少しでも貢献できれば」ときっかけについて語ります。第一弾、二弾と同様、センターが中心となり商品開発会議を6月にスタート。共同開発者三者に、足助観光協会、足助商工会、(株)とよた山里ホールディングス、(株)三河の山里コミュニティーパワーといった強力な販売網を持つ団体、そして市農政課、足助支所も加わり商品化や販売企画を推進してきました。

その中で、コロナ禍による授業や行事の立ち遅れ、校外活動の制限など影響を受けている高校の関わり方が一番の懸案でした。検討を重ねた結果、観光ビジネス類型2年生の課題研究のテーマに落とし込み、「地域のことを知り、地域の魅力を伝える」ことを学ぶことを目的に、①PR動画の制作②商品発表会の開催 ③香嵐渓での販売PRの3つの企画に参画し、生徒が販売PRを担うことになりました。


商品発表会で挨拶する(株)ワイズの山本社長

高校生が「シカしか勝たん」と 思うようになった授業

授業では、山恵の鈴木良秋(すずきよしあき)さん、ハンターでジビエカフェ店主の清水潤子(しみずじゅんこ)さんによる獣害など地域の課題、(株)ワイズの富永豊(とみながゆたか)取締役による「とよた里山ジビエカレー」の開発経緯や取組、カメラマン 中村智洋さんによる動画を使った地域の魅力発信についての講義が行われました。また、鹿肉カレーの試食会や香嵐渓でのPR動画出演、商品発表会のリハーサルも授業の中で取り組みました。

そのなかで鹿肉カレーのキャッチコピーを考える課題が与えられ、17人分の提案の中から(株)ワイズ社内で検討の上、「しかシカ勝たん」が採用されました。採用されたキャッチコピーを考えた上松莉里奈さん(16歳)は、「あまり深い意味はないんですが『〜しか勝たん』がインスタグラムで流行っていて。みんなで話して盛り上がっているなかで思いつきました」と笑顔で話してくれました。大人では到底思い付かない若者らしい発想です。


山恵の鈴木さんによる授業


清水さんによる授業


富永さんによる授業


中村さんによる授業

商品発表会の様子

10月28日(水)、学びの集大成とお世話になった方々への感謝を込めて、生徒による商品発表会が高校で開催されました。生徒が司会進行を務め、開発者の商品説明、招待者の試食、愛知県知事、豊田市長などの試食映像放映、生徒による活動報告と出演したPR動画放映が行われました。今回の一連の学びを通して、同校2年生の西川晃平さん(17歳・松平地区在住)は、「自分の家の畑でも猪の被害にあったことがあって身近な問題を知ることができた授業でした。発表会の司会をしたり、PR動画に出演する機会があったりしてとても楽しかった」と振り返りました。

生徒たちはコロナ禍で慌ただしく落ち着かない中での授業だったと思いますが、前向きに楽しそうに参加していた姿が印象的でした。今年度学んだことを3年生の実践で生かし、山村地域唯一の高校の魅力化を更に盛り上げてもらえることを期待しています。(坂部友隆)


カレーの入手方法についてご案内

価格は1箱650円(税込)1人前200グラム。販売先は市内のカレーハウスCoCo壱番屋5店舗(山之手、大林、梅坪、御立町、浄水店)や、「三州足助屋敷」、道の駅「どんぐりの里いなぶ」など観光施設、メグリアなどスーパーマーケットで11月1日から販売されています。また、(株)ワイズが運営するネットショップ「とよた里山グルメストア」でも購入可能です。ぜひ一度ご賞味ください。PR動画や商品発表会の様子は、Youtube「おいでん・さんそんチャンネル」で配信しています。

▼とよた里山グルメストア
https://toyota-satoyama.stores.jp/


▼PR動画
https://youtu.be/XDxsPwG01MU


▼商品発表会 動画
https://youtu.be/P5KeTXUtWVw