コロナ禍の先にあるミライ ~誰もがあんじゃないと言える社会とは~令和2年度いなかとまちのくるま座ミーティングをオンラインで開催
2月6日㈯、例年多くの方にご参加いただき実施していたいなかとまちのくるま座ミーティングを、初めてオンライン開催しました。お二人のゲスト講師を迎え、約100名の方にご参加いただきました。
コロナ禍で人との接点が減る中、都市と農山村が繋がり、持続可能で誰もが幸せに生きられる未来とはどのような社会なのか、という問いから「コロナ禍の先にあるミライ〜誰もがあんじゃないと言える社会とは」をテーマとしました。
今回のオンライン開催は新たな繋がり、そして気付きをもたらしました。一部ですが内容をご紹介します。
第1部講演 井上岳一氏
『日本列島回復論〜愛と希望の山水郷〜』
私は地方を持続可能にするため、現在はモビリティ(移動手段)を主軸に活動をしています。最先端企業と仕事をしていますが、今後製造業は自動化され雇用が大幅になくなります。トヨタ自動車に支えられている豊田市もこの10年で大きく構造が変わるでしょう。
田舎を都市に近づけようとした田中角栄氏の『日本列島改造論』から約50年の間、残念ながら豊かさや文化的なものを求めて、若者は田舎を出て都市を目指しました。ところが2000年代にインターネットが普及しだすと、自給的な生活、お年寄りの手技、土着の芸能や祭り、助け合う生活など、地方のリアルがどんどん発信されます。
地方の注目度が上がる中の2011年東日本大震災。震災直後の都市部はインフラが壊滅的な打撃を受けて、水問題・排泄物問題に大変悩まされました。一方で三陸の孤立集落では、山から水を引き薪で煮炊きや風呂を沸かし、郷と言って小さな共同体の中で助け合っていた。
山と水の恵み、人が支えあう郷。これが揃いとにかく生きていける地域を私は『山水郷』と呼ぶことにしました。
多くの若者と話す場を持っていますが、時代の変化を感じます。物の所有よりも人や自然との繋がりを意識し、未来のために今を犠牲にするのではなく、今生きていることの充実を重視している。自己実現ではなく共にある生き方を目指している。
コロナ禍で対話の重要性に気が付きました。継続的な対話は人や地域を変える力があります。ローカルで金儲けをしたい人たちが出てきますが、大切なのは対話ができること。対話のできない専門家には何も頼んではいけません。
これから新しい目標を持つこと。そのためには、私たちは今ある現実をすべて引き受け、自分ができることをやり、次に託していく。こ
の繰り返しの中で、日本列島は回復していくのではないかと考えています。
第2部講演 内山節氏
『コロナ禍の先にある新しい社会の創造』
僕のテーマは「コロナの混乱によって次はどんな社会になるのか」。
大前提として「コロナを撲滅する」という話しではありません。今後は色々なことを心配する社会になる気がします。大事なのは「コロ
ナによって起きた社会変化」で、はっきりと社会は「関係を閉じる」方向に動いたこと。僕が住んでいる上野村では自然の情報がたくさん入ってきます。でも都会では人間関係を閉ざしてしまうと情報が本当に少ない。オンラインは全国の人と繋がれる一方で伝えきれない、次の社会を語るまでいかない。一般化すると社会が脆弱するように思います。リアルな情報社会を回復させないといけない。
テレワークが進むと格差が拡大するのではと危惧しています。今まで日本はメンバーシップ型雇用と言って、仲間として人を雇ってきた。欧米ではジョブ型雇用といって、ホワイトカラーの仕事も作業の請負契約です。テレワークが定着することで、今後ジョブ型雇用が一般化すると契約社員化が進み新しい階級社会ができます。ジョブ型雇用のアメリカでは90%の人が仕事に生きがいを感じないというデータもあります。
コロナ禍で管理社会、監視社会が進みます。「コロナファシズム」だと感じることがあって、ドイツでナチスが政権を取った時の主要なプレーヤーは民衆、ナチス、そして専門家でした。上からの統制、下からの統制、それにお墨付きを与える専門家たちがいた。その雰囲気に今が似ている。コロナは分かることはわずかで、エビデンスもなく発言している専門家がのさばっています。
自然はコロナの影響を受けていません。影響を受けているのは人間と人間の関係だ
け。今は関係を細くしないといけないが、別の形で太くする方法はないだろうか。1つの方法はオンライン。でも顔を合わせない助け合いもあるはずで、村の人たちは必死に村を守ろうとしている。都市部の人は近くで感染者が出ても自分の役割が具体的にわからない苦しさがある。ある種の関係が限定されつつ、別の関係を太くする方法を真面目に考えないといけません。私たちは惑わされることなく、
この社会を守るのだと肝に銘じながら過ごしていきましょう。
第3部トークセッション
『コロナ後の社会と山村のミライ』
井上岳一氏、内山節氏、コーディネーター澁澤寿一氏(豊森なりわい塾塾長)
若者と対話の場を持つ井上氏、元大学教授だった内山氏。若者世代がオンラインをうまく使い世界と繋がっていること、自分たちの身体性を持って付き合える地域と、世界の各地にいる仲間、ある意味それで充分幸福を感じる生き方を手に入れ始めていることを実感していると話しました。
「豊田市山村地域に移住する若者たちも、幸せかという基準で人生を設計し、自分で決めたり考えたりしながら、共に生きるコミュニティこそが重要だと話す方が多い」と鈴木センター長。コーディネーターの澁澤氏は、講師の発言を受けて、「コロナ後の社会について、答えがあるのではなく、答えを求めるプロセスから生まれる、言葉にできない「共有」が重要であり、それは、確かな関係性から生まれ
る」とまとめました。
最後に内山氏は「コロナウィルスに負けるな以上に、コロナ社会に負けるなということをこれからも一生懸命やっていきましょう」と締めくくりました。(小黒敦子)