森の大切さボランティアに学ぶ〜子どもの森の健康診断〜じぃじとばぁばと森ドックin惣田の森

雨のため森には入れなかったが、古民家に移動し丸太を切る体験をした

交流と学習を通じて、都市と山村の住民に科学的な森づくりの手法と楽しさを伝える取組『森の健康診断』(以下、森健)。2000年の東海豪雨で山崩れが相次いだのをきっかけに、人工林の状態を明らかにしようと、2005年からボランティア団体を中心に豊田市で始められ、幅広い市民が森の大切さや現状を、正しく理解する活動として全国に広がっています。これは、豊田市が誇る「とよた森林学校」の大きな成果です。

恵みの雨の中で開催

3月21日(日)、森の健康診断出前隊が『子どもの森の健康診断~じぃじとばぁばと森ドックin惣田の森2021』を旭地区の惣田町で開催しました。
この日はあいにくの荒天で実際に山に入ることは叶いませんでしたが、惣田にある築150年の古民家を会場に、大人向け・子ども向けのプログラムを織り交ぜつつの開催となりました。


集合場所の津島神社では、まず事務局の筏井美枝子(いかだいみえこ)さんがスケジュールと感染予防対策の徹底について案内しました。
次に地域代表で渡辺豁(わたなべひろし)さんが豊田市の森と関わりの深い矢作川水系の地理と歴史について触れ、「雨が降らないと川は流れない。川は田を潤し、工業用水や生活用水となり、みんなが恩恵を受けている。今日の雨もありがたいと思ってもらえれば」と挨拶しました。


集合場所の津島神社農村舞台

鈴木敏治(すずきとしはる)さんはフリップを使って「一匹の蜂は払わない・動かないで対処。大群に遭遇したら、全力で逃げる!」「それ以外で下り坂を走るのは、自分の能力以上の速度が出て危険」などと、森での注意点を説明しました。


森での安全対策

森健体操でスタート!

その後、参加者(大人6人子ども5人)は農村舞台に上がり、日丸美彦(ひまるよしひこ)さん指導で「森健体操」で準備運動をしました。「小さな苗木になって~にょきっと伸びて!」「風にゆられてゆらゆら~強風に吹かれてぐるんぐるん!」体操のお兄さんのような日丸さんの軽快な掛け声に、最初はお母さんの後ろに隠れていた子ども達のボルテージは一気に急上昇していました。
全員で津島神社へご挨拶と講座の安全祈願の参拝をし、会場の古民家へ移動します。この古民家は矢作川水系森林ボランティア「とよた旭七森会」が、地域と共に人々の交流の拠点となる場づくり目指し、「惣田基地」と名付けて借りています。
ここからは大人と小学校3年生以下の子どもとに分かれたプログラムの実施です。


森健体操で講座を受ける準備

紙芝居で学ぶ

大人向けプログラムでは、紙芝居で人工林と自然林の差や「健康な森と不健康な森」についての知識、また、2000年の東海豪雨で旭地区の小渡小学校が浸水し幼稚園が流されるなど豊田市でも甚大な被害がでたことをきっかけに、森林ボランティアが中心となって研究者と共同で森健をはじめたことなどを学びました。

五感で感じること

座学の後は時折雨脚が激しくなる中、軒下から実際に森の斜面を眺めました。中根賢二(なかねけんじ)さんは、放置してきた人工林が大きく育ちすぎて葉からの蒸散量が増えたために川の水量が減り、水田に水が来なくなってきていることなど、目で見た景色と集落の問題点とをつなぐレクチャーをしました。

「本に書いてあることを鵜吞みにしない。森に入って、目で見て匂いを嗅いで、音を聞いて、五感で感じること。どうしてかな?と疑問に思う事が大事」と教えてくれました。


電柱を木に見立てて計測する方法を学ぶ

鋸で切ってみる

いよいよ実際に手を動かします。鋸を使って丸太を切る。切った木を光に透かしてみる。匂いを嗅いでみる。切り出した丸太に受け口を切ってから追い口を切り、ロープをかけて伐倒体験もしました。大人と一緒に体験したゆういち君(小5)は「まっすぐ切るのは難しい!」と汗ばみながら何度も挑戦していました。

下山地区在住の藤井さんと一緒に参加した藤井さんのお孫さんで名古屋市在住のゆめちゃんは「切れない」といいつつ、藤井さんのアドバイスで力を入れずに切るコツをつかんだ様子。ざくざくと切り進む藤井さんを見て「おじいちゃん、すごい!」と感嘆していました。

今回の企画は、敷島小学校の総合的学習の時間に森の健康診断出前隊から学んだ児童が夏休みにおじいちゃんと森健をしたというエピソードをもとに発案されたそうです。事務局の筏井さんは「子どものころ森で毎日遊んだり、森と暮らしがつながっていたのは、60歳代以上の方。今はその知恵や経験を次の世代につなぐラストチャンス。是非、祖父母世代とお孫さん世代とが森を介して話をしていってくれれば」と、国土の70%が森林の日本の森を守っていく森健の活動に対する想いを語りました。


丸太を鋸で切る体験

草花や木に触れる

その頃、子どもプログラムでは、裏庭で5種類ずつの草花を採取して形や手触りなどで分類してみたり、木に見立てた学生ボランティアを引き倒す体験をしたり、木のコースターに思い思いの絵を描いたりしていました。丸太がそこにあるだけで、シーソーをしたりと次々と遊びを作り出し、参加者同士すっかり仲良しになっていました。

持参した美味しいお弁当を食べた後は、とよた旭七森会代表の袋真司(ふくろしんじ)さんが、豊森なりわい塾のフィールドワークでお世話になった惣田で恩返しをしようと、森林ボランティアや祭りなどの担い手として惣田町に関わり続けてきた体験を語りました。

「皆さんはこの秘密基地の最初のお客さん。ゴールデンウィークには、モンゴルのゲルを立て、ジビエBBQを企画するのでまた是非遊びに来て」と呼びかけました。

千手檜の物語

地域代表の渡辺さんが「山の神様に千本の手と知恵とを授けられた檜が、里人の苦しみを救う」と伝わる千手檜の『惣田物語』を語りました。そのあとは実際に千手檜を見に山へ出掛けました。雨にかすむ樹齢400年とも450年ともいわれる檜は、荘厳な威容を誇り、参加者は樹皮を伝う雨水もなんのその、胸高囲5.5mにもなる巨木に抱きついて悠久の時を感じていました。


またの再会を約束!

恵みの雨の中での開催となった森健。参加者からは「鋸や伐倒体験など、やってみて楽しかった!」、「惣田の皆さんが個性的で面白い方ばかりで、また秘密基地にお邪魔したい!」、「森林ボランティア講座を受けてみたい!」などの感想が聞かれ、第二弾・第三弾を望む声の大きさに「次回は好天の森健で逢いましょう!」と約束して閉会しました。(松本真実)