自分たちの手で、未来を創る。山村地域での暮らしと仕事の新しい可能性






豊田市の山村地域では、人口減少や高齢化が進んでおり、山村地域をどう支えるかが大きな課題になっています。そんな中、企業が山村地域に関わり、地域経済に影響を与えている株式会社ワイズの地域貢献から始まった商品開発の活動を紹介します。
【山村地域と関わった動機・きっかけ】

株式会社ワイズが、豊田市の山村地域と関わるきっかけは、会社の組織風土を良くするという目的で2016年に旭地区で農業体験をしたのがきっかけでした。おいでん・さんそんセンターの仲介のもと地域と関わる中で、獣害被害、耕作放棄地の増加といった課題を目の当たりにしたことで、企業として何か地域貢献できることはないかという思いが強くなり、山村地域に担当者を置き、始めは社員で農業から取り組み、地域の人と事業を絡めて商品開発を行い、さらに地域経済へも良い影響を与えているというものです。
この活動の中心人物は、元々営業担当だった今村さん。マーケティング、広報、新規事業開発などの多岐に渡る経験を経て、異動により農業の現場に携わるようになった今村さんは、過去に農作業の経験はなく、「今までの仕事と全く違い、これまでやったことのないことばかり。地域の人たちとつながることが面白く、一緒に課題解決に取り組むことで、日々成長を感じています。」と語ってくれました。
【山村地域での活動の内容は】
最初の取組は、獣害被害が多いことから、獣肉加工施設“山恵”と共同でジビエを使ったレトルトカレーの開発を行いました。2017年に「猪肉キーマカレー」、2018年に「猪肉和風カレー」を開発し、さらに足助高校とも連携して、高校生が商品キャラクターの考案やイベントでの販売促進を行い、約3万食を売り上げるヒット商品となりました。この3者での取組は、2018年に内閣官房・農水省による第5回「ディスカバー農山漁村の宝」に選定され、首相官邸で表彰を受けることができました。



しかし、2019年に県内で深刻な被害をもたらした家畜伝染病CSF(豚熱)の影響で、山恵での猪肉の処理ができなくなり、猪肉カレーの生産がストップしてしまったため、2020年からは鹿肉に切り替え、「鹿肉欧風カレー」を開発しました。これも足助高校と連携して高校生がPR動画を作成し、商品発表会まで行いました。
次の展開としては、山村地域でのカフェや交流拠点を生み出すことを視野にいれながら、山村地域に社員で集まれるように古民家を借りて、社員みんなでミネアサヒの日本酒、酢、その酢でピクルスなどを作りました。「こういったものを作る」という縛りはなく、自分たちの田んぼや畑から生まれる農作物や、活動の中で出会うさまざまなパートナーとのコラボレーションから商品を生み出すというスタイルで、まずは楽しくみんなで農作業をするところから活動を始めました。
しかし、活動を盛んにしていこうとした矢先、コロナ禍になってしまい、社員で集まることが難しくなってしまいました。そこで、旭地区の地元住民の皆さんと新たな特産品を作ることに切り替え、数年前から試験的に栽培しているメキシコ原産の唐辛子「ハラペーニョ」に注目し、寒暖差がある気候が合っていること、獣害が少ないこと、高齢者にも育てやすいこと、昨今の激辛ブームや国内在住の外国人の需要も見込めることなどから、特産品として良いのではないかということになりました。

おいでん・さんそんセンターのコーディネートのもと、2019年より連携していた地域の課題解決を図るNPO法人モビリティビレッジ(2019年当時)と2021年に「あさひ&とよたハラペーニョプロジェクト」を立ち上げ、地元住民とそれを応援する人たちの協力を得て、栽培から集荷・販売までの仕組みを構築することができました。
2022年からは、旭中学校にも関わってもらい、栽培指導をモビリティビレッジが担当し、1年目は収穫体験、2年目は栽培出荷体験、3年目は旭ハラペーニョ部!を立ち上げ、ハラペーニョを使った商品開発を行うようになりました。




現在は、旭地区のレストランや加工品製造団体と連携して、新たな商品開発を考えています。
今村さんは、「いろいろな企業の人たちと協業でやることが面白いと感じています。みんな何らかの目的を持ってやっていますが、地域を盛り上げたいという思いが根底にあることが、一緒に協力し合える原動力になっていると思います。」と語ってくれています。
【山村地域での活動が実現した理由は】

活動が実現した理由は、まずは「企業として何か地域貢献できることはないか」という会社の方針のもと、担当を置いて本気で取り組んでいること、また、様々な逆境にもあきらめず、プラス思考で関わり方を変えてきたことが大きいと思われます。
【山村地域との関係性は】
商品開発をさまざまな地元団体と行ったことで、多くの人と関係を築けました。また、2016年から関わり続けており、長年、山村地域に通っていることで、地元住民の人たちからの認知も進み、受け入れられたと感じています。
旭地区の農家の皆さんにとっては、育てたハラペーニョをワイズが全て買い取り、商品化して販売することで、地域の方の農業を続ける上でのメリットにもなっていると思われます。

【今後の展開については?】
今後の展開については、「あさひ&とよたハラペーニョプロジェクト」を広げていきたいと考えており、さまざまな企業、団体等と商品開発を行いながら、関わる人やパートナーを増やしていくことで、大きな取り組みになっていくイメージを持たれています。さらに、農業体験やイベントを開催して、旭に足を運んでいただくきっかけになれば交流人口や関係人口の一助になると思います。これらにより、ハラペーニョが旭地区の特産品と認識されれば、さらにいろいろな展開につながると考えています。
今村さんは「ハラペーニョが旭地区とまちのつなぎ役となり、多くの人に関わってもらうことで、地域の皆さんの課題が解決され、暮らしが少しでも豊かにできるといいなと考えています。」と語ってくれました。



【今後に向けて】
株式会社ワイズは、自社の特性を活かしながら地域と関わりを持つだけでなく、地域の雇用を生み、地域活性化に貢献しています。まずは山村地域と関わってみること、諦めずに本気で関われば、新たな発見や価値の創造が見えてくると思います。


