~山村地域で広がる、都市と山村の協働モデル~





豊田市の山村地域では、行政や森林組合、林業会社などを中心に、人工林の整備や森林環境の保全に向けた取り組みが着実に進められてきました。一方で、広い面積の森林を長期的・継続的に管理していくためには、多様な担い手の関与が欠かせない状況にあります。また、都市部の企業においても、SDGsや脱炭素への対応が求められるなかで、森林や地域とどのように関わっていくかが重要なテーマとなっています。
こうした状況のもと、トヨタ車体株式会社の社員・OBを中心に構成される森林ボランティア団体 「間伐チーム・森人(もりびと)」(以下、森人)は、山村地域での間伐をはじめとする森林整備に継続的に取り組んでいます。おいでん・さんそんセンターによる地域とのマッチングを通じて、その活動は単なるボランティアにとどまらず、企業と地域が協力して森林を守る協働の取り組みとして、少しずつ広がりを見せています。
【立ち上げのきっかけ/関わった背景】
森人の活動の原点は、2012年にトヨタ車体が開始した「企業の森」事業にあります。社員自らが豊田市下山地区の三河湖県有林で間伐に取り組むこの活動は、未経験からの挑戦で、矢作川水系森林ボランティア協議会(矢森協)の支援を受けながら取り組んだことが始まりです。
2019年に、会社主導の体制を見直す動きがあり、間伐に携わってきた主要メンバー約20名が中心となり、任意団体「間伐チーム・森人」を設立。企業を母体としながらも、より自立した立場で森林と向き合う体制へと移行しました。その背景には、「自分たちの仕事や暮らしが、上流域の森林や水環境に支えられている」という共通した思いがあります。源流域の森林を守ることは、地域貢献であると同時に、トヨタ車体の富士松工場や吉原工場で利用される水が矢作川水系に由来していることから、企業活動の基盤を守ることにもつながっています。

(同社提供)

(同社提供)
【山村地域での活動内容】
森人は、三河湖県有林での継続的な間伐活動を軸に、社員・OBが所有する森林の整備やイベント出展により間伐の重要性をPRするなど、活動の幅を広げてきました。作業手順や安全管理については、企業活動で培ったノウハウを生かし、経験者が若手をマンツーマンで指導する体制を整えています。
また、こうした活動を続けるなかで、森人のメンバーから「間伐して終わりにするのではなく、地域の森林循環につなげるため、間伐材を生かしていけないか」といった現場からの声が上がりました。これをきっかけに、間伐材の活用にも目を向けるようになり、2022年にその考えを具体化する形で、間伐材の有効活用に挑戦するプロジェクトを開始。おいでん・さんそんセンターの紹介で、稲武地区小田木町にあるタカドヤ湿地周辺で、地元保存会や山主とつながることができ、森林整備、木材搬出、木材出荷、その収益の一部を湿地への苗木植栽に活用という一連の流れを作ることができました。

(2024年3月活動時)

(2025年3月活動時)
タカドヤ湿地周辺では、倒木や落枝のおそれがある木への対応や、周辺樹木の成長による日照不足などが課題となっていました。加えて、湿地環境の保全を進めていく上で、高齢化に伴う作業の担い手不足も深刻な状況にありました。そんな中、地元保存会等と協働しながら、森人は、間伐や搬出といった実作業を担っており、整備と活用を一体的に進める循環型の取り組みへとなりました。
プロジェクトリーダーを務めるトヨタ車体社員の深津啓高さんは、「東海豪雨をきっかけに人工林の間伐の重要性を意識するようになりましたが、近年は企業に求められる役割も変化していると感じています。森人の活動も、間伐作業を軸にしつつ、間伐材の活用や地域との協働へと広げてくることができました」と振り返ります。
【地域との関係性と反応】
タカドヤ湿地での継続的な活動を通じて、森人と地域との関係は着実に深まっています。定期的な作業や話し合いを重ねるなかで、地元保存会からは「安心して任せられる」「継続して関わってもらえるのがありがたい」といった声も聞かれるようになりました。
こうした関係づくりは、地域と企業の間でこまめに意見交換や調整が行われてきたことで築かれ、おいでん・さんそんセンターも関わることで、無理のない形で活動が継続できるよう支えてきました。

(2023年11月打合せ時)
【組織としての広がり】

(2024年10月出展時)
森人の活動の特徴は、伐採作業に限らず、企画や広報など多様な関わり方が可能なことにあり、年齢や立場に関係なく、フラットに意見を交わしながら進められていることで、幅広い取り組みにつながっています。また、メンバーも最初は会社の活動をきっかけに森林に関心を持ち始め、森人として本格的に関わるようになった人も少なくありません。
近年は、市民向けイベントへの参加など、対外的な発信の機会も増えています。豊田市の「とよた森づくり月間」にあわせて開催されるイベント「森 Thank You」には、2023年からブース出展し、活動内容や地域材の活用について紹介しています。
森人の代表であり、トヨタ車体社員の鬼頭琢磨さんは、「四季折々の美しい風景や、積雪の中での活動、そして一緒に取り組む地元のみなさまの熱意など、タカドヤ湿地での活動は特に印象深いものとなっています。森人として、この素晴らしい湿地の整備に今後も継続して貢献していきたいと考えています」と話します。
山村地域の森林を守ることは、地域の暮らしを支えるだけでなく、都市の企業活動や市民生活を足元から支えることにもつながります。森人と地域による協働の取り組みは、都市と山村がともに未来を描くための一つのモデルとして、今後もさらなる展開が期待されます。

(2025年3月活動時)
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